THE BOOM「島唄」はなぜ普遍的な楽曲に? 宮沢和史が本気で伝えたかったメッセージ
沖縄音楽人気の火付け役・喜納昌吉「魂までコピーしたら許される」
THE BOOMが沖縄民謡・音階を取り入れたアルバム『JAPANESKA』(1990年)を発表したとき、宮沢は「ほんとうに沖縄の音楽に触っていいものかどうか、わからなかったんですね。なんか触ってはイケナイもののような気がずいぶんとして。昔、有名なアーティストが沖縄の音楽を取り入れようとして、ずいぶん酷評されたんですね。だから自分でもやれるもんだろうか? 触ってもいいんだろうか? って勇気がいりました」(書籍『THE BOOM 海を渡る唄』1993年/宝島社)と恐怖心を抱いていたという。
しかしこのときの対談相手だった、沖縄音楽人気の火付け役であるミュージシャン・喜納昌吉は「実によく沖縄音楽をつかまえてるな、って思いました」「あのね、魂までコピーしたら、許されるんですよ。音楽というのは」(同書)と『JAPANESKA』の完成度に賛辞を贈っていた。「島唄」は、属性がないからこそさまざまな音楽を吸収することができた宮沢が、沖縄という土地と音楽の伝統に真摯に向き合い、溶け込んだからこそ完成した曲なのだろう。
宮沢は自著『セイフティ・ブランケット』(1993年/ビクターエンタテインメント)で、誰のために歌を作っているのかについてこのように話している。
「先ずは自分のためである。何よりも自分のため。それは間違いない。自分が先ず今、一番歌いたいもの。その次に、一番身近な人が最大限喜んでくれる歌――僕はそれがポップ・ミュージックだと思っている。ポップとはもちろん大衆であるけれど、はなからそこを意識したものは僕には作れない。ちょっとした、ほんのささいな感情、心の揺れ、それが超個人的な出来事であっても、大勢の人に刺さる曲がポップスだと信じている」
「島唄」には、宮沢が本気で伝えたいメッセージが詰まっていた。だからこそ同曲は2002年にはアルゼンチンで日本語のままカバーされリバイバルヒットを巻き起こすなど、度々話題となる機会に恵まれた。そしてその後も一過性のブームではなく、2014年にTHE BOOMが解散してもなお聴き継がれる普遍的楽曲となった。2023年2月27日には『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)2時間スペシャルに宮沢が出演して「島唄」を披露する予定だが、今なお続くさまざまな「沖縄問題」がその歌から伝わってくることだろう。
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