乃木坂46は世代交代の壁を乗り越えられるか? モーニング娘。とAKB48の例から考える変化の季節に必要なもの
一方その頃、絶大なる人気を誇っていたのがAKB48だ。2010年代前半に「ヘビーローテーション」「フライングゲット」「恋するフォーチュンクッキー」など大ヒット曲を連発し社会現象を巻き起こすとともに、日本のアイドルカルチャー全体に多大な影響を与えた。そんなAKB48が結成10周年を迎えたのは、2015年のことである。この時点でも10年存続するグループは決して多くはなかったが、モーニング娘。と決定的に違ったのは、初期メンバーがまだ在籍していたことだ。つまり「アイドルを10年続けるメンバーがいる時代」になったのである。ちょうどこの前年、同じく10周年を迎えたBerryz工房が「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」という楽曲を発表して話題になった。アイドルを10年続けるケースが、「普通」ではないにせよ散見されるようになっていったのだ。
2010年代後半になるとAKB48は相次ぐメンバーの卒業や乃木坂46をはじめとした坂道シリーズの活躍もあり、徐々に人気に陰りが見え始めた。毎年熱狂を巻き起こしていた『選抜総選挙』も2019年以降は開催見送りとなり、追い討ちをかけるように握手会などの接触イベントが新型コロナウイルスの影響で中止となった。
結局シングルリリースは1年以上も途切れてしまったが、2021年9月リリースのシングル曲「根も葉もRumor」ではファンクサウンドに乗せた高度なダンスパフォーマンスを披露し、”新生AKB”をアピール。AKB48グループと韓国のMnetによるオーディション番組『PRODUCE 48』を経てIZ*ONEに参加したメンバーがグループに復帰したり、SNSを通じた若年層への訴求もあってか、最近では女性ファンが増えたとも言われている。逆境をバネにしてスキルを磨き新たな魅力を模索したという点では、かつてのモーニング娘。にも通じるところがあるだろう。
「根も葉もRumor」と同じ2021年に結成10周年を迎えたのが、乃木坂46である。結成当初の2011年はまさにアイドル戦国時代真っ只中で、女性アイドルグループが急増していた頃だった。それから10年以上の月日が経った今でも、同時期にシーンに台頭し始めていたももいろクローバーZ、SUPER☆GiRLS、でんぱ組.inc、私立恵比寿中学などが活動を続けているほか、個人が複数のグループを渡り歩いてアイドル活動をするケースも増えてきた。つまり、グループ・個人問わずアイドルを10年続けることが珍しくない時代だ。しかし10年経てば長年グループを支えてきた功労者が卒業して世代交代の壁にぶつかることは多くあり、その点は乃木坂46も例外ではない。最近では公式ライバルの結成も発表され、今年はこの先を見据えた新たなグループ像の構築が急務となるだろう。
また乃木坂46は、「代表曲がない」と言われることがある。正確には「LOVEマシーン」や「恋するフォーチュンクッキー」に匹敵するような「誰もが知る国民的ヒットソング」がなかなか生まれなかった、といったところだろう。しかし前作『ここにはないもの』でシングル6作ぶりのミリオンヒットを記録するなどその人気は未だ根強い。社会現象レベルのヒットがなかった分、その反動による落ち込みも起きにくかったのかもしれない。
ただモーニング娘。やAKB48に共通して言えるのは、ターニングポイントとなる時期に従来の枠にとらわれない楽曲・パフォーマンスで新規ファンを獲得していったことだ。乃木坂46も今まさに大きな変化の季節を迎えており、ある意味ではこれまでと違った魅力を開花させるチャンスでもある。今年は新たなグループ像を見せる攻めの楽曲に期待したいところだ。
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