Bialystocks、恵比寿LIQUIDROOMに充満したオーディエンスの期待感 一回性の時間を作り上げた記憶に残る夜
終盤を前にしたMCでは甫木元が『Quicksand』=流砂というタイトルに込めた想いを述べた。沼に足をとられるように自分一人が取り残されるような時もあるが、砂時計だと思えば時も過ぎていく、そんな前向きな意味を与えられたら、というのが大意だったと思う。そこから、大胆に7拍子にアレンジされた「Thank You」で、ポストジャンルへ傾倒していったRadioheadが脳裏をかすめたり、3拍子のブルース「日々の手触り」と景色が刻々と変わるのだが、「日々の手触り」の中盤でフロアから体調不良の観客を助けるサインを甫木元が発見。一旦演奏を止め「立ちっぱなしは大変ですよね。お水お願いします!」と迷うことなくブレイクを入れたことで、フロアのムードが解ける。改めて演奏し始めた「日々の手触り」はグッと明度が増した。堂々たるハチロクの「夜よ」も新鮮。イントロの〈I don’t wanna love you my baby〉のコーラス部分で「待ってました!」とばかりに歓声が上がる「Nevermore」への渇望もこれまでのライブとは違っていた。誰も遠慮なくクラップしたり、手を上げたり、ストレートに曲に反応している。そして今回はそこで終わらず、本編ラストに愉快な気分がもたらされる「Upon You」がセットされた。驚くことにサビでクラップする人がいたりして、好き好きに楽しむ空間ができていた。バンドとファンが作り上げた新たなフェーズと言っていいだろう。
甫木元のセミアコ弾き語りにより、パーソナルな響きを増した「はだかのゆめ」など、ライブならではのアレンジでアンコール3曲を演奏し、鳴り止まない拍手に送られてステージを後にしたメンバーたち。『Quicksand』までの音楽作品と、映画『はるねこ』と『はだかのゆめ』の相関の一つの集大成とも受け取れた今回のツアーだが、それ以上にオーディエンスとともに一回性の時間=ライブを作る胆力に強く揺さぶられた。今後も記憶に残る分岐の夜になることだろう。
■セットリスト
1.朝靄
2.雨宿り
3.あくびのカーブ
4.またたき
5.All Too Soon
6.花束
7.光のあと
8.Emptyman
9.ただで太った人生
10.コーラ・バナナ・ミュージック
11.I Don't Have a Pen
12.Winter
13.灯台
14.Over Now
15.Thank You
16.日々の手触り
17.夜よ
18.Nevermore
19.Upon You
En1.はだかのゆめ
En2.ごはん
En3.差し色
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