ハンブレッダーズ ムツムロ アキラの描く歌詞がリスナーの心を射抜く理由 『またね / THE SONG』を軸に紐解く

 ハンブレッダーズが、2月8日に3rdシングル『またね / THE SONG』をリリースした。バンドにとって初の両A面シングルとなった本作。アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のエンディングテーマとして書き下ろされた「またね」、リスナーへの直球のメッセージが清々しく響く「THE SONG」と、異なるアプローチの中にもハンブレッダーズならではの歌詞の独自性が光る2曲が並んでいる。今回リアルサウンドでは、楽曲制作を手がけるムツムロ アキラ(Vo/Gt)からのメールインタビューの回答をもとに、多くのリスナーから支持を集めるハンブレッダーズの歌詞の魅力について紐解いていく。書き手はライター/インタビュアーの鈴木淳史。(編集部)

『またね / THE SONG』に到達するまでの歌詞の変化/進化

(写真=タマイシンゴ)

 初めてハンブレッダーズの楽曲を聴いた時に感じた魅力は、いわゆる文系少年の繊細さが表現されている点であった。教室の隅にいるような陰の感情を、ポップかつキャッチーなロックとして鳴らすというギャップは、確かに新しいと思ったのを覚えている。全曲の作詞を担当するムツムロ アキラは、そのポイントに自覚的になった時期があるという。

「2017年の夏から秋にかけて制作した『DAY DREAM BEAT』という曲ができたのが最初だったと思います。自分にとって学校はマジでどうしようもない空間だったけれど、3分間だけなら逃避できたなって」

〈幾千回 脳内でリピート再生/余すところなく丸暗記したミュージック/友情も努力も勝利も似合わない青春に/仕方がないから鳴らされた革命歌〉(「DAY DREAM BEAT」2018年)

ハンブレッダーズ「DAY DREAM BEAT」Music Video

 ムツムロと木島(Dr)の高校時代に結成され、でらし(Ba)やukicaster(Gt)との出会いにより現体制となった大阪発4人組バンド・ハンブレッダーズ。教室の隅から鳴らされた純度の高い革命歌は結果多くの人に届き、2020年に1stフルアルバム『ユースレスマシン』でメジャーデビューを果たす。30人や40人の教室の狭い世界から、一気に何万人や何百万、もしかしたら、それ以上の広い世界と対峙することになっていく。その現状をポジティブに捉えて、今までとは違う方向性で立ち向かう。

「『ユースレスマシン』は関わる人が増えたので、自分のエゴイスティックな部分を削ってポジティブな意味で周囲に任せてみようという気持ちもあったアルバムでした。それもあって、『ギター』(2021年2ndフルアルバム)や『ヤバすぎるスピード』(2022年3rdフルアルバム)は初心に立ち返り、明確なテーマをバンド側から打ち出して作ったものだという気がします」

 『ユースレスマシン』はメジャーデビューアルバムとして、インディーズ時代の結果を経た上で、よりよい結果を出す。しかし、続く2枚目、3枚目では次の課題をすぐに見つけて方向転換ができるのは流石である。本人が言うとおり、『ギター』『ヤバすぎるスピード』はバンドが歌うべきテーマやアティチュードという明確なテーマを打ち出した言葉が歌われている。

〈愛と平和を歌っても相変わらずな世界で/変わらず愛と平和を歌うのが僕の戦いさ〉(「BGMになるなよ」/アルバム『ギター』収録)

〈昔に戻りたいだなんて一度も思ったことない/初めてギターをかき鳴らした あの瞬間よりも今が最高〉(「ヤバすぎるスピード」/アルバム『ヤバすぎるスピード』収録)

 過去にムツムロのインタビューを担当した際、お互いが好きなヒップホップアーティストの話になったことがある。ポップにキャッチーに聴かれることを意識するロックバンドでありながら、とにかく己の想いを届けようとするヒップホップを聴いていることが印象的であった。だから、この2枚のアルバムの変化/進化は納得できたし、どんどん説得力を増していることも合点がいく。

ムツムロ アキラ(写真=タマイシンゴ)

「ここ数年の歌詞はバンドよりもヒップホップに影響を受けています。後、SNSで流れる音楽の対極にあるイズムがヒップホップとパンクだと思っていて。自分の人生は自分で決めるDIY精神を持ち続けていれば、ずっとバンドを続けられるんじゃないかという憶測が、この2枚を出したことによって確信に変わりつつあります。ポップスの歌詞には誰のものにでもなる良さがあって、ヒップホップにはカバーじゃ成り立たない歌詞が多い。自分はその間のバランスで歌詞を書けたらなとよく思います。『光』は誰かのものにもなるし、ハンブレのライブで俺が歌うことで(約3年間サポートギタリストを務めたukicasterが正式加入した)新体制のオープニングテーマという意味も持つ、ちょうどいいとこ取りができた曲になってると思います」

〈体力ゲージ真っ赤になって/マイナス発言ばっかになって/ゲシュタルトも崩壊して/ありとあらゆる有難い言葉が/斜めに聞こえてくるけど/落下する瞬間も楽しめるぜ ロックンロールは/ライクアジェットコースター 上がり下がりを〉(「光」/アルバム『ヤバすぎるスピード』収録)

ハンブレッダーズ「光」Music Video

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