04 Limited Sazabys、Creepy Nuts、Saucy Dog……昨年フェス出演ランキングから読み解く2023年の動向
長らくコロナ禍で苦境にあったライブエンターテインメントが、いよいよ本格的に復活する。2023年は、ライブシーンやフェスシーンに完全に熱気が戻ってきた1年になるはずだ。
1月27日、政府はイベント開催制限の撤廃を決定した。マスク着用など基本的な感染対策を前提に、満員でも大声での声援や合唱などの声出しが認められるようになった。すでに昨年から各地で声出しを解禁したライブも開催されてきたが、約3年ぶりに新型コロナウイルス感染対策のためのイベント規制がほぼ全て解除されたことは、ライブエンターテインメントにとって大きなターニングポイントになったと言える。特にオーディエンスとのコール&レスポンスや会場の一体感もライブの魅力の一つであるロックバンド勢には追い風になるはずだ。
そんな2023年のフェスシーズンはどんな様相を見せていくのか? シーンの主役となりそうなアーティストは誰かを探っていきたい。
まず注目すべきは04 Limited Sazabysだろう。様々なフェスが中止や延期に追い込まれた2020年、2021年を経て、フェスシーンが復活傾向にあった昨年にもフォーリミは目覚ましい活躍を見せてきた。『SUMMER SONIC 2022』、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO』をはじめとする様々なフェスに出演、3年ぶりとなったバンド主催の野外フェス『YON FES 2022』も成功させた。『日経エンタテインメント!』2023年1月号にて発表された2022年の「音楽フェス出演数ランキングTOP30」では首位を獲得。以下はその上位10組だ。
1位 04 Limited Sazabys (出演本数25本)
2位 Creepy Nuts (24本)
3位 Saucy Dog (23本)
4位 10-FEET、マカロニえんぴつ (22本)
6位 Vaundy (21本)
7位 打首獄門同好会、SUPER BEAVER、マキシマム ザ ホルモン(20本)
10位 MAN WITH A MISSION(19本)
(『日経エンタテインメント!』調べ、22年に全国で開催された121の主要フェスの出演者数をカウント)
このランキングから見えてくるポイントは2つある。ひとつは10-FEETやマキシマム ザ ホルモンといった20年以上のキャリアを持ち日本のラウドロックシーンを支えてきたバンドが今も強い存在感を示しているということ。SUPER BEAVER、打首獄門同好会、MAN WITH A MISSIONらも2010年代からの「フェス常連組」のバンド勢だ。
もうひとつのポイントは、若い世代のアーティストの台頭だ。Vaundyは2020年に初ライブが実現。マカロニえんぴつ、Saucy Dogも20年代に入って大きく飛躍を果たした。10年代はフェスやサーキットイベントの現場の盛り上がりから頭角を現すバンドが多かったが、ここ数年はYouTubeやTikTokでファンを掴む一方ステージでのパフォーマンスで説得力を見せるタイプのアーティストが躍進している。
そう考えると、フォーリミはその2つの世代の“中間”とも言える存在だ。
2008年に名古屋で結成し、2015年にアルバム『CAVU』にてメジャーデビュー。2016年には地元・愛知県で『YON FES』を初開催している。2018年のフェス出演ランキングでは、その年の1位となったHEY-SMITHに続く2位。2010年代後半、彼らはまさにフェスの現場で頭角を現していった。
そして、コロナ禍でライブ活動が制限された中でも、彼らはシングル『fade / Just』のリリース時に架空の運送会社「Yon Express」を設立し抽選で選ばれたファンのもとにメンバーが直接CDを届けるなど趣向を凝らした企画で活動を続けてきた。
筆者は昨年に開催された『VIVA LA ROCK 2022』でのフォーリミのライブを観たのだが、ステージのパフォーマンスだけでなくGEN(Vo/Ba)の熱のこもった饒舌なMCも印象的だった。自分たちのライブを初めて観た人がどれくらいいるかをオーディエンスに問いかけた時には、予想以上の手が上がっていた。コロナ禍を経てフェスのオーディエンスの年齢層が着実に変わりつつあり、そして若い世代のオーディエンスからも彼らが熱い支持を集めているということを垣間見た瞬間だった。
また、2位となったCreepy Nutsはこのランキングの中では唯一のヒップホップユニットだ。彼らの場合はヒップホップフェスよりもむしろロックフェスに多く出演を果たしオーディエンスの心を掴んできたことがこの結果につながったと言える。昨年には『RISING SUN ROCK FESTIVAL』でトリをつとめるなど全国各地のフェスから引っ張りだこの存在となってきた。