TOMOO、様々な“BEAT”で通わせた心 新たな試みも取り入れた初の全国ワンマンツアーファイナル公演

TOMOO初全国ワンマンツアーファイナルレポ

 シンガーソングライターのTOMOOが、昨年12月16日の福岡・DRUM Be-1を皮切りに、全国5大都市を巡る初の全国ワンマンツアー『TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 “BEAT”』のファイナル公演を1月15日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて開催した。

 詩的なショートムービーがステージ背後のスクリーンに大きく映し出され、サポートメンバーの大月文太(Gt)、松本拓郎(Ba)、関口孝夫(Dr)がステージに現れると客席からは大きな拍手が鳴り響く。その音をかき消すかのように、力強く踏み鳴らされるキック。赤いシャツを羽織ったTOMOOが遅れて登場し、「さあ、いくよー!」という掛け声とともに彼女の記念すべきメジャーデビュー曲となる「オセロ」のイントロが奏でられると、会場のボルテージは一気に上昇した。

 続く「酔ひもせす」は、シンプルかつ歯切れの良いピアノのコードバッキングと、キャロル・キングやジェイムス・テイラーら1970年代シンガーソングライターを彷彿とさせるメロディが印象的なナンバー。サビではTOMOOが客席に向かって手を左右に振ると、それに応えたオーディエンスのウェーブが会場いっぱいに広がった。

 ファルセットを巧みに織り交ぜたTOMOOのアルトボイスを存分に活かす「What's Up?」は、2017年にリリースされた5曲入りEP『Blink』収録曲。この曲も「A&Mポップ」を連想させる懐かしいメロディが特徴だが、ビートの効いたアレンジや、TOMOOの等身大の歌詞世界が瑞々しく心を震わせる。

 「すごい、すごいですね!」と、満員のフロアを眺めながら驚きの声を上げるTOMOO。「3曲目で言うのもなんですが、みんな疲れてないですか、大丈夫? マスクしながらのライブは大変だと思うけど、一緒に無理せず『いい日』を作りましょう」と、ファンをねぎらいながらの挨拶をした。

 「らしくもなくたっていいでしょう」では、ちょっとした新たな試みも。先だってここZepp DiverCity(TOKYO)で行われた、ジェイコブ・コリアーのライブを観たサポートギターの大月が、ハンドクラップを用いてオーディエンスと作り上げていた彼の演出に感銘を受けたことが発端。それを聞いたTOMOOが、「私たちだってできるよね?」とオーディエンスに呼びかけ、曲が進むにつれてハンドクラップのパターンを変えていく演出を、その場で提案し会場を一体感に包み込んだ。

TOMOO(写真=Kana Tarumi)

 16ビートのグルーヴィーなリズムがマーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイ、あるいは透き通るようなファルセットボイスが1970年代の荒井由実あたりを思わせる「レモン」では、ローズピアノを軽やかに演奏するTOMOO。マイナーコードとメジャーコードを行ったり来たりしつつ、洗練された響きの中に情感を込めたその絶妙なバランスは、彼女ならではの持ち味だ。

 ペダルノートを用いたベースラインや、ひねりの効いたコード進行がポール・マッカートニーやトッド・ラングレンを彷彿とさせる「地下鉄モグラロード」を演奏した後は、「Mellow」「ベーコンエピ」「夢はさめても」の3曲を弾き語りで披露。ここでツアータイトルの『BEAT』には、大きく打ち鳴らされるビートだけでなく、耳をすまさないと聞こえてこない心臓の音(ハートビート)や、休符という「音のない瞬間」にも宿るビートのことも含まれているとTOMOOが明かす。

 「人とがっつり関わっていこうと思って、それが続いていけば続いていくほど、『え、こんな一面があったの?』とか『え、分かり合えない!』みたいなことが、玉ねぎの皮を剥くように表れていくのが人との関係だと思うんです。そもそもバラバラに生まれ、バラバラの心を持っている者同士だから仕方ないことで。でもバラバラに始まった、それぞれの心の中のBPMを重ねることはできるでしょう、という気持ちで当時書いた曲です」と、「夢はさめても」を紹介。〈ばらばらに燃えるふたつの心臓は/重なってゆける/甘すぎた夢はさめても〉と、“恋の幻想”が剥がれ落ちた先の“希望”を歌い上げた。

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