2023年のボカロシーンは新世代への移行期に? ファン層の二極化、ヒットメーカーの入れ替わりなど現状を整理
もうひとつ2023年の傾向として予測されるのが、シーン全体を率いるヒットメーカーの入れ替わりである。昨年のボカロシーンに関わるトピックを語る際、再評価期の2020年前後を牽引したクリエイター達のメジャーシーンにおける活躍を避けて通ることはできない。依然ボカロPとしての活躍は続けつつも自身での歌唱活動を本格化させるsyudou、TOOBOEとしてメジャーデビューを飾ったjohn。彼らと共にアニメ『チェンソーマン』週替わりエンディングテーマを担当し、初の本人歌唱曲を披露したKanariaや、各方面から注目を浴びる音楽プロジェクト・MAISONdesに“入居”しアニメ『うる星やつら』EDテーマの作曲を担当したツミキなど。
シーン復活の勢いを支えた面々のメジャー活動の影響か、2022年投稿のヒット曲は2021年に比べ、客観的に見てもやや爆発的なムーブメントには欠けるのが実情でもある。上記の推移を見る限り、2023年以降シーンの勢いはここ数年に比べ失速する可能性も否めない。しかし一方で最盛期から低迷期に陥った時代と比較すれば状況そのものはずいぶん明るく、主に冒頭で述べたクロスメディア由来の人気などにより、ジャンル全体の地盤は盤石な状態とも言えるだろう。そのため今現在水面下で着々と力を蓄えつつある新たな才能も多く、2023年は再興期を支えた面々から、次の時代に台頭する世代への移行期として位置づけられる1年と成り得るかもしれない。
振り返ってみれば2022年も、かいりきベア「バグ」やピノキオピー「魔法少女とチョコレゐト」「転生林檎」、Kanaria「酔いどれ知らず」「QUEEN」など、人気曲が次々と登場。すりぃ「ラヴィ」もニコニコ動画への投稿から約3カ月で100万回再生を突破する驚異の伸びを見せており、年末年始を経て息の長い支持を獲得する楽曲へと成長を見せ始めている。様々な変遷を経て目まぐるしく変動するボカロシーン。その行く末を、2023年も興味深く注視したい。
※1:https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=niconico