家入レオ、WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』OPテーマで表現した“生きる”ということ 光と闇で描いた温かさ

目を背けずにいれば、光は必ず射してくる

ーーレコーディングはいかがでしたか?

家入:レコーディングは泣いて歌っていました。

ーー泣いていたんですか?

家入:石崎さんがボーカルディレクションもしてくださったのですが、どう向き合ったら曲の良さが引き出せるか、というところまで考えてディレクションしてくださっていたと思います。それに歌詞も、私自身迷っていた時期から目をそらさないと決めて書いたもので、灯子たちも最終戦争後の世界をそれでも生きている。その意思の強さみたいな部分で、私の気持ちと灯子たちの気持ちをリンクさせることができました。言い換えるならば、パンドラの箱を開けたようなレコーディングでした。

ーー家入さん自身の状況が、『火狩りの王』のストーリーとリンクする部分があって。泣きながら歌ったというのは、思わず感情があふれてしまったと。

家入:あの時はこういうことで傷ついたとか、一つひとつ細かく正確に覚えているわけではないのですが、忘れられない、通り過ぎることのできない、いろいろな小さな出来事が自分の中に残っていて。この楽曲を歌うことによって、そういう消化できていなかったものが、外に放出されていくような感じだったと思います。これが嫌だったとか、こういうことで傷ついたとかではなくて、歌いながら「大丈夫だ。浄化されていっている」と感じるレコーディングでした。

ーー歌を録り終えた時は、少しすっきりしたような。

家入:空っぽでした。疲れた~っていう。

ーー泣くのも疲れますからね。

家入:はい。疲れました。

ーー家入さんの歌声は、切なさ、儚さがありながら、どこか何かを信じているような強さも感じました。声質や歌い方など、何か意識されたことはありましたか?

家入:流れるように歌わない、ということを意識しました。普通にサラっと歌うこともできるのですが、そこに本当の自分の体験が伴っているかどうか。単に〈噓つき〉というワードをただ発するのではなく、〈噓つき〉からちゃんと何かが派生しているかどうか、その部分はとても意識しました。

ーー家入さんにとって、とても大事で特別な曲になったのかもしれませんね。

家入:すごく大切な曲になりました。自分の人生を踏まえて曲として表現したかったものと、『火狩りの王』で描かれているもののシンクロ率がとても高かったことで、こういう曲が生まれたのだと思います。

ーー物語は、灯子と煌四という2人のメインキャラクターの物語が平行して描かれ、それが一つに重なっていきます。歌詞の視点としては、どちらかをイメージしたのですか?

家入:特に誰かを限定したわけではありませんが、どちらとも受け取れるとも思います。

ーーラフな質問ですけど、『火狩りの王』には、“火狩り”と呼ばれる怪物を狩る人たちが出てきて、その狩りを手伝う“狩り犬”もたくさん出てきます。そもそも灯子は火狩りに命を助けられ、“かなた”という犬を、火狩りの家族の元に返すため外の世界へと旅立つところから物語が始まります。かなた、みぞれ、てまり、いろいろな犬が出てきますが、この子を飼ってみたいと思う子はいましたか?

家入:かなたは、灯子をすごく守ろうするので、意思というか正義感がとても強いワンちゃんだなと思いました。それぞれにいいところがあるので、この子と限定せず、全員飼ってみたいです(笑)。

ーー家入さんも実家では犬を飼ってらっしゃるそうで、何かエピソードがあれば教えてください。

家入:私、小さい頃はとても引っ越しが多くて、できた友達とすぐお別れする環境なのを母が心配して、ミニチュアダックスフンドの“クリス”という子を連れてきてくれたんです。クリスという名前は聖書からつけました。実家に帰る時は、クリスと遊ぶのも楽しみなことの一つです。こういうお話をしていると、小学生の時のことを思い出しますね。学童から帰るといつもクリスが玄関で待っていてくれたなって。母親が働いていたので、帰ってもそれまではいつも一人で不安だったんですけど、クリスが来てからはすごくホッとして、クリスがいてくれて良かったなって。とても長生きで、今年で17歳なんですけど、たまに実家に帰ってクリスを見ると、なおさら思いますね。「ありがとう、あの時一緒にいてくれて」って。

ーー最後になりますが、この「噓つき」という曲は、いろんな方に届くと思います。ファンや聴いてくれた人にとって、この曲がどんな存在になったらいいなと思いますか?

家入:絶望を歌うことで、光を感じてもらえたらいいなと思っています。情けなかったりどうしようもできなかったりすることから、目を背けずにいれば、光は必ず射してくると私は思っていて。『火狩りの王』の灯子たちも、諦めずに生かされている。お父さんが自分の命を守ってくれたとか、バトンをつないでくれたとか、そういう愛を胸に生きていくアニメなので、「噓つき」も誰かにとって、「がんばらなくていいよ」と言われることでがんばれるような、そういう曲になるといいなと思います。

ーー聴いてくれる人にとっての光のような曲と。

家入:はい。私自身本当に落ち込んでいる時ほど、応援歌は聴かないんです。応援されればされるほど、すごく苦しくなるから。それなら「落ち込んでいることも、生きていることのうちのひとつだよ」と、言ってもらえることのほうが、私自信は抱きしめられているような気持ちになります。そういう温かさを宿した曲になっていると思いますので、ぜひいろんな方に聴いてほしいです。

■番組情報
WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』
放送・配信日:2023年1月14日(土)午後10時30分より放送・配信スタート
【WOWOWプライム】(第1話無料放送)【WOWOWオンデマンド】(無料トライアル実施中)

・キャスト
灯子:久野美咲
煌四:石毛翔弥
明楽:坂本真綾
炉六:細谷佳正
綺羅:早見沙織
緋名子:山口愛
ほか

・スタッフ
原作:日向理恵子(「火狩りの王」ほるぷ出版 刊)
キャラクター原案:山田章博
監督:西村純二
構成/脚本:押井守
キャラクターデザイン:齋藤卓也
総作画監督:齋藤卓也・黄瀬和哉・海谷敏久
音楽:川井憲次
音響監督:若林和弘
アニメーション制作:シグナル・エムディ

・楽曲
オープニングテーマ:「嘘つき」家入レオ(ビクターエンタテインメント)
エンディングテーマ:「まだ遠くにいる」坂本真綾(フライングドッグ)

・公式サイト:https://hikarinoou-anime.com/
・コピーライト:Ⓒ日向理恵子・ほるぷ出版/WOWOW

■リリース情報
Digital Single「嘘つき」
WOWOWオリジナルアニメ『火狩の王』オープニングテーマ
先行配信中

New Album『Naked』
発売日:2023年2月15日

家入レオ オフィシャルHP
http://leo-ieiri.com

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