Mrs. GREEN APPLE、温かい空気の中で見せた伸びやかな姿 10周年への期待高まる『ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~』

「ツアーファイナル、終わっちゃうなって感じですよ」

「実感湧いてきたね」

「2022年も終わるということでグッとくるものがあるね。復帰の年だったから」

大森元貴

 全国のZeppを2カ月かけて巡った『Mrs. GREEN APPLE Zepp Tour 2022 ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜』の最終日であり、Mrs. GREEN APPLEにとって2022年最後のワンマンライブとなった12月27日のZepp DiverCity(TOKYO)公演。アンコールに応えるためにステージに戻ってきた大森元貴 (Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)が余韻を噛み締めながら、名残惜しげにそう話していたのが印象に残っている。活動再開後初のライブとして7月8日に開催された『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”』が必然的に様々な意味を伴ったのに対し、今回のツアーはもっとシンプルなものに。最初のMCでの「今日僕たちは最大の愛情を持ってきたんですけど、片想いで終わらないように、戦い合いたいと思ってますので。どっちの愛情が大きいかの勝負だと思ってます」(大森)という投げかけが象徴するように、笑顔溢れる温かなライブとなった。

 2時間超のステージでまず初めに感じられたのは、この5カ月でのバンドの進化だ。ギターのフィードバックノイズに、観客が思わず声を上げたオープニング。「ファイナルいけるかー!」(大森)という言葉を合図に届けられたサウンドは力強く、「藍」「灯火」を経て鳴らされた「ニュー・マイ・ノーマル」のエネルギーは特に凄まじい。若井が終始ギターを弾き倒す傍らでバンドがタイトにキメる「インフェルノ」のシャープな佇まい。「No.7」曲中のテンポダウンとともにサウンドの重心もグッと下がった瞬間。「soFt-dRink」における音のトメハネのニュアンスの揃い具合。大森の歌とギターを主役にバンドがダイナミクスをつける「僕のこと」のドラマティックさ。今回のツアーで久々に演奏された「スターダム」で見せた静と動のコントラスト。7カ所14公演のツアーが彼らをまた逞しくさせたのだろう、バンドが一枚岩になれていることが様々な場面から伝わってきた。天を仰ぎながらギターを弾く若井は心底気持ちよさそうで、「だいぶ飛ばした気がするなー!」と笑う藤澤からは充実感が見て取れる。

 一方、バンドがしっかり一つになれているからこそ、個人がより躍動できる側面もあるのか、気分に合わせて歌メロをアレンジする大森(「私は最強」、ただでさえキーが高いのにhiG#にまで到達する)だけではなく、若井も藤澤もフレージングがより自由でしなやかになった印象。今のバンドの感覚にフィットするようなリアレンジもこのツアーの見どころで、「青と夏」はキーもテンポも変えて、青空よりも夕焼けが似合う曲に変貌。同じく大胆に姿を変えたのは「パブリック」で、シンコペーションを取り入れたサビ、原曲とはまた異なるテイストの鍵盤ソロ、全員が激しく掻き鳴らすなかで大森が叫ぶように歌うエンディングと、濃密な展開を見せた。

 バンドの演奏を正面から歓迎するフロアの盛り上がりようも気持ちよく、場内は明るいムードだ。この日のライブは、新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインの下、シンガロング以外の声出しはOKとのことで、フロアからは以前のように歓声が飛んでいる。ステージ上の空気もシビアではない。「アボイドノート」に入る前の「ワン、ツー、スリー、フォー!」というカウントにはメンバーの笑い声が混ざっているし、演奏しながらじゃれ合ったりもしている。また、若井と藤澤が“「私は最強」を息継ぎせずに長く歌えた方が勝ち”という対決を始めたり、若井を困らせようと大森がMC中に突然ギターを弾き始めた結果、バンドも臨機応変に対応し、若井が即興で歌ったりラップしたりする謎の展開になったりと、隙あらばすぐにふざける3人だ。

 「ありがたいことにアリーナでもライブをやらせてもらえるようになりましたけど、この距離感でしかできないライブってきっとありますよね。それを実感した14公演でした」と大森。「やっぱり、待っていてくれるみんなが温かいなって。本当にありがたいことだなと、ライブをしながらしみじみと思いました」と若井。観客の眼差しに安心し、ステージ上の3人は心の底から笑い合っている。月日が経て変わるものはたくさんあるが、3人の関係性は変わっていないように感じられる。メジャーデビュー曲「StaRt」はこの日「今日の景色、空気感は、また必ず、10年後とかに昨日のことのように思い出せるなと感じています。それだけ素敵なツアーだったし、いい日だったから、初心を忘れんなよって自分らに歌おうかな」(大森)という言葉とともに演奏されたのだった。

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