ドレイク、21 Savageとのコラボで“アグレッシブなスタイル”へ これまでにないリリシズムから垣間見えたスキル
トロント出身のスーパースター、ドレイクが6月にサプライズリリースした『Honestly, Nevermind』。主にダンス/ハウス曲で構成されたアルバムであったが、Billboard Hot 100で1位を獲得したのは唯一のラップ曲「Jimmy Cooks feat. 21 Savage」であった。愛、失恋、孤独といった内容の歌詞が多い『Honestly, Nevermind』であるが、「Jimmy Cooks」はまるで2人が2021年にリリースした「Knife Talk feat. 21 Savage, Project Pat」の続編とも捉えることができる。アルバムのコンセプトとは裏腹に「Jimmy Cooks」は、アグレッシブな内容のサウスヒップホップ曲として、アルバム内で最も売れた曲となった。
10月22日に公開された「Jimmy Cooks」のMV内で、2人によるコラボアルバムが告知され、11月4日に『Her Loss』がリリースされた。プロモーションとして『Tiny Desk Concert』や『Saturday Night Live』のような人気番組のパロディ映像を公開していたことも話題になった『Her Loss』であるが、特に注目されたのは、2人が偽の『Vogue』誌の表紙を飾っている画像である。これが実際に発売されると信じたファンやメディアも多いようで、『Vogue』の運営会社Condé Nastによって400万ドルで提訴された(※1)。
『Her Loss』は初週で41万枚を超えるユニットのセールスを記録し、Billboard 200で1位を獲得した。自分の弱みや感情をさらけ出し、共感を生むことで数々のヒットを飛ばしてきたドレイクであるが、『Her Loss』はこれまでとはまた違う作品になっており、21 Savageとのコラボ曲「Sneakin’」や「Knife Talk」などで片鱗を見せていたストリートスタイルでアグレッシブなドレイクを聴くことができる。アルバム全体的にも『Honestly, Nevermind』で見せたハウスに影響されたプロダクションとは違い、ベースが重く響くヒップホップ/トラップビートが重点的に使用されている。
21 Savageはストリートにおける敵を排除する冷酷な内容を淡々とラップするスタイルで知られており、アトランタの過酷なストリートをレペゼンしているラッパーだ。今では世界的ポップスターとなったドレイクであるが、21 Savageとコラボをするたびに彼のストリートのスタイルに感化されていることがわかる。特に『Her Loss』では、ドレイクは自分から多方面に“敵”を作るようなアグレッシブなスタイルを取り入れており、明らかに21 Savageのスタイルに影響を受けていると言えるだろう。実際に21 Savageは、ドレイクに思っていることを発散するように推奨し、アグレッシブなリリックを書くことを後押ししたと明かしている(※2)。ラップ曲が「Jimmy Cooks」のみであった『Honestly, Nevermind』とは裏腹に、今作のドレイクはラッパーとしてのリリシズムで世界に喧嘩を売っていることがわかる。