yama×くじら、アニメ『SPY×FAMILY』ED主題歌「色彩」での再タッグに至るまで それぞれの活動を経て感じた進化
SNSを中心に注目を集める新世代シンガー・yamaがテレビアニメ『SPY×FAMILY』(テレビ東京ほか)第2クールエンディング主題歌「色彩」をリリースした。今作はストリーミング累計再生で3億回を突破した「春を告げる」と同様、くじらによる作詞作曲となっている。
「色彩」は、「春を告げる」を彷彿とさせるサウンドでありながらも、喜怒哀楽にあふれる『SPY×FAMILY』の温かい空気感に寄り添った一曲だ。この2人がタッグを組むのは約2年ぶり。これまで抜群の相性を見せていたこの2人の共演を待ち望んでいたファンは多いはず。久々のタッグとなった経緯から、この「色彩」という楽曲について、そして『SPY×FAMILY』の魅力について2人に話を聞いた。(荻原梓)【記事最後にプレゼント情報あり】
相性抜群な二人は「お互い音楽に求めるものが近い」
ーー2人が最初にタッグを組んだ作品は、くじらさんの名義でリリースした2019年の「ねむるまち (feat. yama)」ですよね。まずはその頃の2人の出会いから教えていただけますか?
yama:元々自分はくじらくんのことを知ってて、音楽性や歌詞の言葉選びに自分と共通する何かがあるなと思ってました。いつも自分は音楽を聴く時に勝手に楽曲を解釈してるんですけど、くじらくんの曲はこう思って書いたんじゃないかっていうのが考えやすいんです。たぶん人間としての根本的なところが似てるのかな。だから楽曲の世界観にも入り込みやすいんだと思います。
くじら:自分はyamaさんの歌声や、それまでの「歌ってみた」の曲のセレクトも含めて、全部を見てファンとして応援してる気持ちでした。最初に知った時は「なんだこの人は」と思って。インターネットの中だけでくすぶってるようなレベルの人じゃないでしょって。
yama:それは言い過ぎじゃない(笑)?
くじら:でもそれくらい衝撃だった。こんな人がいるんだと思って。そんなことを思っているうちに「ねむるまち」という曲ができて。フィーチャリングという形なら一緒にできるかもと思って、コンタクトを取らせていただきました。
ーーそれはyamaさんを世に広めたいという意識ですか?
くじら:というよりは、ただただ曲を作って、できることならyamaさんに「歌ってみた」をしてほしいけど、自分のことを知ってるなんて微塵も思ってなかったので。でもこの曲にとっては絶対にyamaさんに歌ってもらうのが一番いいし、自分もファンとして一緒に作品を作れたら嬉しいなと思って声を掛けさせていただいたという感じですね。
yama:「ねむるまち」を初めて歌った時に自分の中ですごくしっくり来て、なんでなんだろうと思ってたんですけど、くじらくんが歌い手の歌声を想像しながら曲を作っているということを後で知って、なるほどなと思いましたね。
ーーそこから2020年にyamaさん名義で発表した「春を告げる」の大ヒットがあり、「あるいは映画のような」まで何度か2人のタッグで曲をリリースしていた頃は、いちリスナーとしてゴールデンコンビのような印象を抱いてました。2人の相性の良さについて何か感じていることはありますか?
yama:相性は良いと思います。自分自身で曲を書いているわけではないからこそ、楽曲に対して求めることっていつも色々あって。でもくじらくんの場合は、それが極端に少ないんです。いつも「そう! それなんだよ!」というのを書いてくれるので、「こういう楽器を使ってほしい」とか「こういう構成で」「歌詞はこうで」っていうのを一度も言ったことがなくて。だから不思議なんですよね。説明していないのにいつも自分の好きな曲を書いてくれるので。
くじら:嬉しいです。もちろん自分は好きなように書いてはいますけど、その中にyamaさんが好きそうなポイントとか言葉の並びを盛り込んだものをお渡ししているので、「歌いたい」と思ってもらえるであろうものを曲に詰めてます。あとはやっぱり変に遠慮しなくていいのが大きいですね。ボーカリストとして超一流なので、どんなものでも大丈夫だろうと信頼しています。
yama:解釈が違ってないか不安になることもあるけど、どうなんだろう?
くじら:たぶん解釈が近いんだと思う。お互い音楽に求めるものが近いから、OKにしかならない。歌に対する細かい修正とかはほとんどしたことないですね。
ーーそんな相性抜群の2人ですが、それから約2年間は各々の活動に進み、長いことタッグがありませんでした。これはなぜでしょうか?
yama:この相性の良さって自分はすごく安心できるんだけど、ちょっと不安になる要素でもあって。というのも、くじらくんに頼りきりになってしまってはこの先大変なんじゃないかなと思ったんです。引き出しを増やすという面でも自立しなきゃという思いがあって。だからしばらくは封印したいと個人的に思ってたんです。それと、ずっとこのタッグで活動を続けていったら、くじらくんが一人のアーティストとして活躍するのをもしかしたら妨げてしまうかもなとも思って、別々でルートを確保した方がお互いにとっていいのかなと思ってました。
くじら:うんうん。
yama:ずっと前から「自分で歌った方がいいよ」とも伝えてましたし、一人のアーティストとしてくじらくんが評価されたらいいなと思ってます。なのでお互いの成長のためにという感じでした。
くじら:個人としてもチームとしてもかなり近いところにいるので、やろうと思えばいつでもやれる距離にはいたし、あまり離れていたという気持ちはなかったですね。普通にファンとして追いかけていて、すごいなと思ってましたし、yamaさんの活動を見て自分も頑張りたいなと思ってました。
ーーそして今回の「色彩」で約2年ぶりとなる久々のタッグを組むことになりました。これはどういう経緯で実現したんでしょうか?
yama:『SPY×FAMILY』の原作者の遠藤達哉先生が自分たちのことを気に入ってくださってたみたいで、くじらさんとのタッグでお願いできませんかという話をいただきました。ちょうど自分もそろそろくじらくんと一緒にやりたいと思ってたタイミングだったので、ようやくその時期が来たんだと思いましたね。
くじら:いつか来るんだろうなとは思ってたので「もちろんやります」という感じでした。楽曲のテイストは自分らしい音色にすれば、自然と『SPY×FAMILY』の世界観と合うだろうなと思って、なるべく華やかで、祝祭感をイメージして。あとは何について歌うかをずっと考えてました。今までの自分だったら諦観とか、しょうがないよねという感じを歌ってたんですけど、こういう見方をしたら明るくなれるよねという視点で書いたつもりです。
ーーたしかにこの「色彩」という曲は、「春を告げる」路線のサウンドでありつつも、それとは一線を画した明るさや温かさを感じます。
くじら:どうしても自分は穿った見方とか捻くれた言葉遊びをしちゃうんですけど、エンディング主題歌として聴いた人に「今日も観て良かったな」とか「明日から頑張ろう」と思ってもらえるよう、前向きなエネルギーを持った曲にしたいと思ったんです。原作を今一度読み直して、『SPY×FAMILY』から自分がもらったパワーとか、影響を少しずつ書き起こしたり、原作が持っているエネルギーを言葉にしたいなと思って書きました。
yama:『SPY×FAMILY』に寄り添った世界観ではあるんですけど、何度も聴いていくと「これは自分たちのことなんじゃないか」とも思ったんですよね。まさに前に進もうとしてる自分たちのことだなと。これまでのくじらくんの曲もずっとそうだったんですけど、この曲も自分の言葉として歌えそうな楽曲だなと思いました。
くじら:実は「色彩」は今までで一番トラック数が多いんです。
yama:そうなんだ!
くじら:120くらいだったかな。
ーーそれは相当多いですね……!
くじら:エンジニアのうねさん(釆原史明)に本当にすみませんという感じでデータを送って。メロディもえげつないものを書いてしまったので、yamaさんには頑張ってくださいという感じで渡しました。
ーー「ライブでこれ歌えるのは地球上でyamaさんだけ」とツイートしてましたよね。
くじら:本っ当に! この曲をライブでやったって聞いて、人じゃないなと(笑)。
一同:(笑)。
yama:最初に聴いた瞬間に、あまりにもレコーディングに時間がかかりそうだと思ったので、これは宅録にしなければと思って。でも、さらにこれをライブで表現する時はどうしようと思ってました。言葉数も多いし、メロディの上下も激しい。ラップっぽい箇所もあったり、音楽として聴いていて乗れるところもあって、でも言葉が聴こえなきゃいけない部分もある。そのバランスを取るのが難しいなと。
くじら:今までのyamaさんの曲を聴いてて、まあ越えられる壁でしょうと。
yama:本当に試されてる(笑)。
くじら:1割くらい「yamaさんごめんね」と思いながら作りました。でも改めて「春を告げる」を聴き直すと、芯の部分は変わっていないんだけど、表現の幅というか、厚みが増してると思います。