May J. “楽曲カバー”をライフワークとして続ける理由 「もう否定的な意見もまったく気にしていない」

May J.、楽曲カバーを続ける理由

 May J.が、6枚目となるカバーアルバム『Bittersweet Song Covers』を11月9日にリリースした。同作には「RIDE ON TIME」や「想い出がいっぱい」といったヒット曲や、CMでお馴染みの「ウイスキーが、お好きでしょ」、近年TIkToKで再注目を集めた「フライディ・チャイナタウン」など全12曲が収録されている。

 オリジナル作品のリリースと並行して、流行のポップスや往年のヒットナンバーをコンパイルしたカバー作品を定期的に発表し、ジャンルや時代を超える名曲とリスナーを繋いできたMay J.。近年は自身のYouTubeチャンネルにもカバー曲をアップし、今作の制作のきっかけも同チャンネルで展開している昭和歌謡曲をメインとしたカバー企画「スナック橋本」だったという。

 本インタビューでは、クリス・ハートも一部参加した同作の制作秘話とともに、ライフワークとなった“楽曲カバー”に対する思いを語ってもらった。(編集部)

YouTubeチャンネルの手ごたえが今回のカバーアルバムに繋がった

ーーMay J.さんにとって6枚目となるカバーアルバム『Bittersweet Song Covers』。制作のきっかけは、ご自身のYouTubeチャンネルで行われている「スナック橋本」になりますか?

May J.:まさにその通りです。自分のYouTubeチャンネル自体は、コロナ禍で思うように活動ができなくなったときに「何かしないと!」と思って始めたんですよ。TVなどでは緊張してしまってなかなか自分らしさを出すことができないけど、YouTubeであればそこも安心してお見せできるんじゃないかなっていう思いもあったので。

ーー「はしもっちゃんの歌ってみた」「カラオケ採点バトル【KINGDAM】」「コラボ♬」などいろいろなチャンネル内企画がある中、往年のヒット曲をカバーする「スナック橋本」がスタートしたのが昨年9月でした。

May J.:YouTubeって、どんな年代の方が視聴してくださっているかを見ることができるんですけど、私のチャンネルは年齢層の高い大人の方も多かったんです。なので、そういった世代の方に喜んでもらおうと思って始めたのが「スナック橋本」なんですよ。「はしもっちゃんの歌ってみた」は単純に自分が今歌いたい曲をセレクトしていますが、「スナック橋本」はターゲットを意識しているっていう。それによってコンテンツの棲み分けがいい形でできているなとは思っているんですけど。

ーースナックの“開店”から約1年が経ってみての感想はいかがですか?

May J.:最初は私自身がスナックに一回くらいしか行ったことがないし(笑)、スナックのママとしてどんな立ち振る舞いをしていいかがわからないから、「やってて大丈夫かな?」という心配も少しありました。でも、続けているうちにどんどん楽しくなっていったし、みなさんからの反響もすごくよかったので、シリーズ化したんですよね。当初は年齢の高い方に向けてやっていましたけど、コメントを見ていると若い方もたくさん観てくださっていて。「スナック橋本」で歌っているような80年代の曲は世代を超えて注目されているんだなということに気づきました。最近、世間的にもシティポップが流行っていたりもするし、昔の曲が今、あらためてエモくなっている印象で。その手ごたえが今回のカバーアルバムに繋がっていった流れです。

ーー今回、収録されるのは、ほぼすべてMay J.さんが生まれる前の楽曲ですよね。

May J.:はい。以前リリースしたことのある楽曲やYouTubeで歌っていた楽曲も入っているんですけど、それらは歌う前には知らなかった曲がほとんどですね。シティポップを意識した新録曲もあるんですけど、「埠頭を渡る風」(松任谷由実)や「土曜の夜はパラダイス」(EPO)などは初めて聴く曲でした。

ーーそのあたりはスタッフの方などから提案を受けての選曲ということですか。

May J.:そうですね。新録曲に関しては、時代的にどうしてもシティポップにフォーカスしたかったんですけど、私自身はもちろん、チームにも詳しい人があまりいなかったので、シティポップに詳しい栗本斉さん(『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』著者)にアドバイスをいただいて。May J.の歌声に合う楽曲をずらっとリストアップしていただき、そこから「埠頭を渡る風」と「土曜の夜はパラダイス」を選ばせていただきました。

ーーその他の新録曲は「ウイスキーが、お好きでしょ」(石川さゆり/SAYURI)、「ロンリー・チャップリン」(鈴木聖美 with Rats&Star)、「フライディ・チャイナタウン」(泰葉)になりますか。

May J.:あと「メロディー」(玉置浩二)もそうですね。これはYouTubeの「はしもっちゃんの歌ってみた」で先に公開しました。

「ウイスキーが、お好きでしょ」Covered by May J.【スナック橋本】

ーー「フライディ・チャイナタウン」はシティポップの括りに入りそうですよね。

May J.:そうですね。この曲に関してはきっかけがあって。私はナインティナインの岡村隆史さんがやっているラジオのイベント(『岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭』)に毎年出演させてもらっていて、毎回リクエストされた曲を歌っているんですよ。で、2016年のイベントで歌ったのが「フライディ・チャイナタウン」だったんです。それまで知らなかった曲なんですけど、聴いた瞬間にものすごく好きになって。それ以降、カラオケに行けば必ず歌うようになったし、自分のライブでも一度歌ったことがあるんですよね。いつか音源化したいなと思っていたので、今回収録することができてすごく嬉しいです。

ーーそれぞれの曲をカバーするにあたって、アレンジについて何かリクエストしましたか?

May J.:基本的にはすべてお任せをしたんですけど、オリジナル曲を忠実に再現してもらいたかった気持ちはありました。今の音を盛り込みつつも、オリジナルの良さをちゃんと感じてもらえる忠実なアレンジがいいなと思っていたので。それは歌に関しても同様ですね。

ーー確かに、すべてにおいてオリジナル曲の外せないポイントはしっかり押さえられています。でも、歌に関してはMay J.さんならではの色がしっかり注ぎ込まれている印象もあったんですよね。細かい歌いまわしやフェイクなどに。

May J.:うん。そこはね、たぶん自分のベースとなる部分なので変えようと思っても変えられないというか(笑)。「忠実に」っていうのは、モノマネするのとはまた別次元のことなので、歌い方の部分までオリジナルに似せようとするのはちょっと違うかなと。毎回、カバーをするときはそうなんですけど、今回もあまりいろいろ意識することなく自分なりに歌いました。ただ、「土曜の夜はパラダイス」に関してはけっこう意識的に歌い方を変えたんですよ。

ーー具体的にはどんな部分ですか?

May J.:なるべくビブラートを使わないようにしたんです。元々、私はどんな曲であってもビブラートをつけちゃう癖があるんですけど、この曲の持っている乙女な雰囲気を考えると、ビブラートをつけるとちょっと伝わらないなと思ったところがあって。なので、語尾をまっすぐ伸ばすことを意識して、時にはそれをちょっとキュッと上げてみたりしながら、乙女らしさが出るような歌い方をしてみました。

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