chilldspot、初の全国ツアーから得たもの 旅の終着点に映し出されたメンバー4人とバンドの成長
主人公がさまざまな場所を周って経験を積み、成長していく姿を描く映画のジャンルを「ロードムービー」と言う。chilldspot初の全国ツアー『One man tour “Road Movie”』のツアータイトルは、「全国6カ所を巡る中でメンバー4人が成長できるように」という想いを込めて付けられたそうだ。そんな旅の終着点とも言えるツアーファイナル公演が、10月26日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行われた。
バンドは2019年12月に結成。すぐにコロナ禍に突入してしまったこともあり、当初はなかなか有観客でのライブができなかった。彼らが初めてワンマンライブを行ったのは2021年10月のこと。そう、ちょうど今から1年前だ。ライブを見ていて、初ワンマンからたった1年とは微塵も感じさせない、堂々としたパフォーマンスが印象的だった。「music」でステージが幕を開けると、続く「line」では手拍子で観客を巻き込む。息の合ったバンドサウンドがクレッシェンドしてラストサビに突入する様子も圧巻で、序盤から一気に彼らの世界に引き込まれた。「shower」では幻想的なライティングがフロアを包み、「Sailing day」では4人がそれぞれ体を揺らしながら心地よいグルーヴを生み出す。
中盤、「皆さんと距離を近づけようと思って」と語った比喩根(Vo/Gt)はギターを置き、「夜の探検」「Weekender」「夜更かし」の3曲をハンドマイクでプレイ。ステージを左右に移動しながら、低音も高音も自由自在に使い分ける伸びやかな歌声を観客に届ける。〈久しぶりの運動靴/蝶々が勝手に足を運んでく〉(「夜の探検」)の歌詞にあわせて大股で歩く素振りを見せるなど、動きの自由を手に入れたことで彼女の歌はより表現力を増して聞こえた。そんな比喩根の歌に、玲山(Gt)、小﨑(Ba)、ジャスティン(Dr)の楽器隊が彩りを添えていく。「dinner」では出だしから重厚感のあるサウンドで圧倒し、「Groovynight」では間奏で3人が向かい合ってグルーヴィなアンサンブルを披露。本ツアーを通しての、4人それぞれの新たな挑戦が垣間見えた瞬間だった。