キタニタツヤ、鮮やかな感情を届けた濃密な夜 『UNKNOT / REKNOT』ツアーで向き合った“生きる”ということ

 キタニタツヤのワンマンツアー『UNKNOT / REKNOT』の初日、Zepp DiverCity(TOKYO)公演が10月15日に開催された。

 SEに導かれるようにバンドメンバーとキタニがステージ上に揃うと、静かな空気を切り裂くようなギターの音色を皮切りに「Rapport」で本公演はスタート。タイトで存在感のあるバンドサウンドがリズムを刻む。衝動を内包するキタニの歌声は、それでいて真摯に言葉を届けていく。牙を剥くようなギターリフから獰猛さを感じさせる歌声で「悪魔の踊り方」を披露すると、キタニは自由にステージ上で身体を動かしながら歌い、ブレイクも織り交ぜながらその場を支配するような存在感を放つ。そして軽い挨拶と「どうぞよろしく」の一言をクールに投げかけると、そのまま「PINK」「夢遊病者は此岸にて」へ。地を這うようなベースと推進力のあるリズムとともに、激情を覗かせつつも妖艶な声色と振舞いであっという間にオーディエンスを魅了していく。

 「楽しいっすわ、どうもありがとう」とフランクに呟くと、「人間みたいね」では一息つくように爽快感のある音色を紡ぐ。少し力を抜いたような柔らかな歌声を届けると、「愛のけだもの」でもミックスボイスや裏声を多用しながらしっとりと歌詞を奏でた。

 序盤にしてすでにアッパーで激しい楽曲と、柔らかさのある楽曲でギャップを見せるキタニだったが、どの楽曲からもサウンドや歌声の端々から生命力が感じられる。瑞々しい感情が、鮮明なサウンドとともに感情豊かな歌声で奏でられていく様子は圧巻であった。

 エフェクティブなサウンドに悲しみを匂わせた「冷たい渦」でも感情を揺蕩わせると、一斉に鳴り響くクラップに満足そうに「いいねえ」と笑う。それを合図に、目まぐるしいサウンドとともに「芥の部屋は錆色に沈む」に突入。キタニもベースを持ち、怒涛の演奏を繰り広げていく。ステージの中央でピンスポットに切り抜かれるキタニのベースソロは、流石の華やかさだった。

 改めて挨拶をしたキタニは、ツアータイトルについて語り始める。『UNKNOT / REKNOT』が「一旦ほどき、再度結ぶ」という意味であると説明すると、「生きることでも音楽を続けることでも、なにかを続けていると、そのうちに何かを見落としたり忘れたりすることが増えると思うんだよ。俺もなんのために音楽やってるんだって思うこともあるし、みんなの中にもなんで生きてるんだって思う人もいるかもしれない」と続ける。「そういうときに立ち止まって、これからの道どうだっけって見てみたり、来た道を振り返ってみるとか、そういうことが必要なんじゃないかと思って」。そこまで話すと、書いたときとは違う気持ちで歌えるのではと思ったという「デマゴーグ」へ。キーボードの伴奏にのせ、力強さも込めながら柔らかく歌い上げる。

 そして波の音から「波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。」に入ると、水面にさす一筋の光のように毅然とした歌声を響かせる。壮大な祈りのような「君が夜の海に還るまで」、冬から春への季節を叙情的に描く「ちはる」へと、儚いものを愛すような描写をハンドマイクを握り、感情を込めて紡いでいく。そして、「プラネテス」の〈あのムーンリバーを渡って/迷いながら進もう/沢山の世界をあなたと見たいよ〉という歌詞。コールアンドレスポンスはできずとも、オーディエンスは手を大きく振って応えた。

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