高野寛×櫻坂46 小池美波、世代を跨いだ“YMO&高橋幸宏”対談 時代を超えて愛される音楽の魅力

「私と同じくらいの年代の方にもぜひ楽しんでほしい」(小池)

ーー幸宏さんのボーカルの魅力についても改めてお聞かせいただけますか?

小池:なんて言ったらいいんだろう……ささやく感じでもないんですけど、歌っているような、話しているような、すごく心地よくて不思議な魅力がありますよね。聴いていて落ち着きます。YMOさんの楽曲の中でも、高橋幸宏さんの声が入っている部分をつい探してしまいますね。

高野:「歌っているような、話しているような」という小池さんのコメント、なるほど鋭いなと思いました。僕はもう、当たり前のように刷り込まれてしまった幸宏さんの声ですが、確かに「歌であって歌でない」瞬間が多いというか。例えば「テクノポリス」では、ボコーダーを使って「TOKIO」と言っていますが、幸宏さんの声って、そういうボコーダーで作り上げる人工的な声が混じり合っているような、ちょっと無機質な魅力もあるんですよね。『サラヴァ!』(1978年)の頃はまだ普通に歌っているので、YMOとしての活動を通して確立された歌声なのでしょうね。

ーーDisc 4『BOYS WILL BE BOYS』には、1982年のLIVE 映像作品『BOYS WILL BE BOYS』と、1983年の映像作品『新青年』からセレクトしたライブ映像が収録されています。こちらをご覧になっていかがでしたか?

高野:みんな、まだ若者ですよね(笑)。アラサーの幸宏さんや教授、鈴木慶一さんが演奏しているのはなんだか不思議な気がします。自分が同じくらいの歳のころ、どんなことをやっていたかな? とつい比べながら見てしまうのですが、やっぱりみなさんすごい経験をされているし、さっきの話じゃないけどそりゃ大人っぽい顔つきになるよなと。それまでのキャリアが顔つきだけではなく、立ち姿にも表れていると思いました。

小池:ものすごくシンプルなセットでライブをやるってカッコいいしクールだなと思いました。やっぱり高橋幸宏さんの、ドラムを叩いている時や歌っている時の目線が好きで。ついつい引き込まれてしまいますね。

高野:細野さんもカッコいいですよね。曲の途中から細野さんのベースが入ってきた瞬間にグルーブが変わるというか。その存在感はすごいなと。シンセベースを弾いても素晴らしいですし、ミュージシャンとしてちょっと別格。幸宏さんと細野さんのリズム隊は唯一無二だと思っています。

ーー高野さんは、80年代当時の音楽が次世代に受け継がれていることについて、リアルタイム世代としてどんな心境ですか?

高野:さっき小池さんが「なんでこの時代に生まれなかったんだろう」っておっしゃっていましたが、僕も小池さんと同じような気持ちを1960年代の音楽に感じていたんですよね。自分が体験していない世代って、特にすごく輝いて見えるから、憧れを抱く気持ちもわかる。ただ、当時の音楽が全てカッコ良かったわけじゃなくて。今聴き返してみると、「ちょっと古臭いな」と感じるものも確かにある。だけどYMOは全く古びていない。その違いってなんなんだろう? ということをすごく考えさせられます。それがやっぱり「本物の輝き」なのではないかなと思うし、自分もそういう作品を残したいなといつも思っていますね。

ーー小池さんは、YMOや高橋幸宏さんからの音楽から何か影響を受けていると思いますか?

小池:やっぱり、世の中には自分の気持ちを鼓舞したり、癒したりしてくれる歌詞がたくさんあると思うんですけど、YMOさんや高橋幸宏さんの楽曲には歌詞のないものがたくさんあって。そういう楽曲に触れることで、感じ方もちょっと変わってくるというか。「この楽曲は、こんなことを表現しているのかな?」とか、言葉以外の部分でいろんな聴き方が少しずつできるようになってきた気がします。

WALKING TO THE BEATS「LOVE TOGETHER」

ーーところで、幸宏さんの音楽活動50周年を祝した、高野さん率いるスペシャルユニット「WALKING TO THE BEATS」によるトリビュート曲「LOVE TOGETHER」が9月7日に配信リリースされました。

高野:幸宏さんを愛するミュージシャンが集まって作った1曲です。僕が作詞作曲を担当し、ボーカルは僕と慶一さんと坂本美雨さん、そして大貫妙子さんの4人。ドラムは大井一彌くんという、幸宏さんをリスペクトしてやまない新進気鋭のドラマーが叩いていて、ベースを細野さんが弾いています。40歳差のリズム隊ですね(笑)。幸宏さんご本人も聴いて喜んでくださったと聞いてほっとしています(笑)。みんなの幸宏さんへの愛が詰まった楽曲なので、ぜひ聴いてみてほしいです。

ーーでは最後に、YMOと高橋幸宏さんに興味を持つ読者へメッセージをお願いします。

小池:私が音楽を聴くきっかけを与えてくれたのはYMOさんや高橋幸宏さんで、楽曲を聴くことによって好きな音楽の幅が広がったり、今流行っている楽曲の聴こえ方も変わったりしたので、私と同じくらいの年代の方にもぜひ楽しんでほしいです。

高野:幸宏さんやYMOが残してきた音楽は、時代を超える不思議な力があって、小池さんと同年代の方たちにもきっと何かしら引っかかる部分があると思います。それと、リアルタイム世代で久しくYMOを聴いていなかった人たちも、今聴くとまた新鮮な気持ちで楽しめると思います。僕自身、本当にそのことを実感しています。

■リリース情報
WALKING TO THE BEATS「LOVE TOGETHER」
配信中(ダウンロード/ストリーミング/ハイレゾ)
発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ
「LOVE TOGETHER」はこちら

高橋幸宏『IT'S GONNA WORK OUT ~LIVE 82-84~』
2022年9月14日(水)発売
発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ
完全生産限定盤:3CD (Blu-spec CD2) + BD 品番:MHCL-30731~4
デジパック仕様 ブックレット付 価格:¥11,000(税込)
配信はこちら
(映像、一部音源は配信無し)
ソニーミュージック特設サイト

<Disc 1&2 CD(Blu-spec CD2)>
“YUKIHIRO TAKAHASHI TOUR 1982 WHAT, ME WORRY?”

・Disc 1
1. WHAT, ME WORRY?
2. IT'S GONNA WORK OUT
3. SCHOOL OF THOUGHT
4. THE REAL YOU
5. DISPOSABLE LOVE
6. GLASS
7. GRAND ESPOIR
8. CONNECTION
9. NOW AND THEN...
10. DRIP DRY EYES
11. SAYONARA
12. FLASHBACK

・Disc 2
1. H (THEME FROM CLUB FOOT)
2. SPORTS MEN
3. KEY
4.SOMETHING IN THE AIR
5. IT’S ALL TOO MUCH
6. EXTRA-ORDINARY
7. ALL YOU'VE GOT TO DO
8. CUE

・Disc 3 CD (Blu-spec CD2)
“tIME and pLACE”
1. MY BRIGHT TOMORROW
2. 蜉蝣/KAGEROU
3. DRIP DRY EYES
4. FLASHBACK
5. 前兆/MAEBURE
6. SOMETHING IN THE AIR
7. IT'S GONNA WORK OUT
8. THE APRIL FOOLS
9. HAPPINESS IS HAPPENING

・Disc 4 Blu-ray
“YUKIHIRO TAKAHASHI Live Selection 83-84”
1. MY BRIGHT TOMORROW
2. KAGEROU
3. MAEBURE
4. SAYONARA
5. FLASHBACK
6. THE REAL YOU
7. ARE YOU RECEIVING ME?
8. IT'S GONNA WORK OUT
9. CUE
(以上YUKIHIRO TAKAHASHI JAPAN TOUR 1983 『BOYS WILL BE BOYS』より)
10. WILD & MOODY
11. STRANGER THINGS HAVE HAPPENED
12. MURDERED BY THE MUSIC
13. DISPOSABLE LOVE
14. THE PRICE TO PAY
(以上YUKIHIRO TAKAHASHI WILD & MOODY TOUR ’84 『新青年』より)

〈ユキヒロ×幸宏 EARLY 80s〉シリーズ 発売中タイトル
●高橋ユキヒロ/音楽殺人(1980)
SA-CD hybrid: MHCL-10138 ¥3,300(税込)
Vinyl: MHJL-171 ¥4,070 (tax in)*完全生産限定盤
●高橋幸宏/ニウロマンティック~ロマン神経症~(1981)
SA-CD hybrid: MHCL-10139 ¥3,300 (税込)
Vinyl: MHJL-172 ¥4,070 (tax in)*完全生産限定盤
●高橋幸宏/WHAT, ME WORRY?(1982)
SA-CD hybrid: MHCL-10154 ¥3,300(税込)*ボーナストラック3曲
Vinyl: MHJL-204 ¥4,070 (tax in)*完全生産限定盤
●高橋幸宏/薔薇色の明日(1983)
SA-CD hybrid: MHCL-10155 ¥3,300(税込) *ボーナストラック3曲
Vinyl: MHJL-205 ¥4,070 (tax in)*完全生産限定盤
●高橋幸宏/WILD & MOODY(1984)
SA-CD hybrid: MHCL-10156 ¥3,300(税込)*ボーナストラック1曲
Vinyl: MHJL-214 ¥4,070 (tax in)*完全生産限定盤
●高橋幸宏/四月の魚 サウンドトラック(1985)
SA-CD hybrid: MHCL-10157 ¥3,300(税込)*ボーナストラック2曲
Vinyl: MHJL-215 ¥4,070(税込)*完全生産限定盤

<高野寛 プロフィール>
1964年生まれ。大学生の頃から当時は珍しかった宅録による創作を開始。1988年SSWとしてソロデビュー。ほとんどの楽曲の作詞・作曲・編曲・ギター・プログラミングを自ら手掛けるスタイルで、2019年までにベスト盤を含む22枚のソロアルバムをCDで発表。2020年春以降は、未発表作品をbandcampから配信リリースし続けている。(2022年10月現在・36アイテム・240曲以上)。

ソロ作品の他、世代やジャンルを超えたアーティストとのコラボレーションも多数制作。ギタリストとしてもYMO、高橋幸宏、細野晴臣、TEI TOWA、星野源を初めとした数多くのアーティストのライブや録音に参加し、坂本龍一や宮沢和史のツアーメンバーとして延べ20カ国での演奏経験を持つ。サウンドプロデューサーとしては小泉今日子、THE BOOM、森山直太朗、GRAPEVINE、のん などの作品を手がけている。

<櫻坂46 小池美波プロフィール>
1998年11月14日生まれ、兵庫県出身。愛称は“みい”“みいちゃん”。秋元康総合プロデュース、櫻坂46のメンバー。応募者2万2509名のオーディションを経て、2015年8月に乃木坂46に続く「坂道シリーズ」第2弾グループとなる欅坂46(現・櫻坂46)として誕生。

2016年4月6日、1stシングル「サイレントマジョリティー」でデビュー。

父親の影響で昭和歌謡に魅了され、吉田照美と共にMBSラジオ『ザ・ヒットスタジオ(火)』のパーソナリティを務めた。柔らかい雰囲気や女性らしい可愛さを持ちつつも、楽曲や激しいダンスパフォーマンスで魅せる表情のギャップに男女問わず人気を誇る。アイドルの枠を超え、バラエティー番組や各メディアでも活躍中。

所属する櫻坂46は、現在全国6都市12公演の全国ツアー『櫻坂46 2nd TOUR 2022“As you know?”』を開催中、11月8日・9日のツアーファイナルは東京ドームにて行う。

10月19日には1st Blu-ray & DVD『1st YEAR ANNIVERSARY LIVE ~with Graduation Ceremony~』を発売。

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