ASPが見据える、メジャーデビューのその先 “伝説”の日比谷野音で再会を誓う
モグ・ライアンが「今日は生きていたいって思いました」「ずっとずっと私たちと生きていてくれたら嬉しいし、私たちも死の物狂いで生きていきます」と語ったMCとメッセージ性がリンクしたロックバラード「I wanna live」、ASPのアンセムとも言える「SAKEBE」、そして本編ラストを飾るならず者との出会いを歌った「M」。筆者が前回O-WESTで観た際のASPは、ユメカ、ナ前ナ以、モグの3人とそれ以降に加入してきたメンバーの実力の差は無視できないものだった。しかし、先述したチーチーのデスボイスは「ITSUMO KOKOKARA」とデジタルハードコアの「NO REASON」でユメカにも負けないほどの絶唱を轟かせている。まだ不安定ながらも、真っ直ぐに歌声を届けるリオンタウンに、ASPの身体の一部としてそれぞれなくてはならない存在となっているマチルダーとウォンカー。ステージの左右に設置された巨大なスクリーンに生き生きとした彼女たちの表情が映し出された時、今ASPは横並びとなってメジャーデビューをしていくのだと強く実感させられた。
アンコールでは、メジャーデビュー曲「Hyper Cracker」を初披露。渡辺は先のインタビュー動画の中で、WACKアーティスト全体の曲調がロックに傾倒していることに触れながら、「全てをぶっ壊して、ASPの中でいわゆる“今”を捉えたサウンドプロダクションをしたい」と今後のグループ方針を明かしている。Yohji Igarashiが楽曲プロデュース/サウンドメイクを担当し、作詞作曲をPecori(ODD Foot Works)が手がけた「Hyper Cracker」は、ハイパーポップを踏襲したユメカの言う“ぶっ飛ぶ”ようなナンバーだ。アバンギャルドな電子音は不思議とASPとマッチしながら、ラップを主体とした歌い回しや夏の匂いがする歌詞が新鮮かつ、ナ前ナ以の力強いボーカルやチーチーのロングトーンが十二分に生かされている。「A Song of Punk」とはまた違った、グループの新たな始まりを告げる楽曲の誕生だ。
「拝啓 ロックスター様」でライブを締めくくったASPは、9月2日に行う24時間イベント『24 hours ANARCHY ANARCHY SHiT SHiT PARTY PEOPLE』、さらに9月18日にスタートする全国ツアー『GOD SAVE the ASP TOUR』のツアーファイナルを12月23日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催することを会場で発表した。野音と24時間イベントを完遂したASPはすでにメジャーデビュー後の次の景色を見ている。
そして、見据えるさらに先には再びの野音が待っている。ナ前ナ以は「今日はならず者と私たちの記念日ですね。みなさん約束してくれますか? また日比谷野外音楽堂で会いたいです」と投げかけた。それに応えるようにしていつまでも鳴り続けるならず者の拍手。ASPにとっての伝説の野音はまだ終わっていない。