今夏フェス、異例づくめの“代打出演劇”を振り返る 藤井風、クラムボンら粋な演出が生んだドラマ

 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』も数多くの代打出演が発生することになった。indigo la Endの代打ではPOLYSICS、BiSHの代打ではTHE BAWDIES、打首獄門同好会の代打では感覚ピエロ、なきごとの代打ではオレンジスパイニクラブが発表された。当日、そのアーティストのライブを普段とは異なる客層が見ていた影響もあったのか、代打アーティストのステージの多くがTwitterのトレンド入りを果たした。『ロッキン』開催初期からシーンを盛り上げてきたPOLYSICSが、“今”の若者に目撃され、魅了していたのが特に印象的だった。また、coldrainの代打としてCrossfaithがブッキングされたのだが、音楽的志向として似たようなマインドを持つバンドがその穴を埋める関係性にドラマを感じた。なお、Crossfaithは当日、coldrainの「The Revelation」をワンコーラスカバーして披露し、オーディエンスを盛り上げている。

 『フジロック』ではメンバーが新型コロナウイルス感染症に罹患したことにより5人のゲストを迎えた特別編成のセッションライブを披露したBREIMENは、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』ではLenny code fictionの代打出演にて、『ロッキン』初出演を果たした。直前での出演決定ではあったものの完成度の高いステージを見せ、初出演とは思えないほど堂々としたパフォーマンスだったという声があがっていた。

 『ジャイガ OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2022』ではReolの代打としてOKOJOが出演を果たし、ジャンルの垣根を超えるケースも目撃された。また、『京都大作戦2022』ではACIDMANの代打としてROTTENGRAFFTYが、クリープハイプの代打として四星球が出演を果たした。当日は代打出演のバンドがそれぞれのカバーやオマージュを披露して会場を盛り上げていたようで、主催の10-FEETはもちろん、各バンドとの絆を実感させる一幕となった。

 『SUMMER SONIC 2022』ではnever young beachの出演辞退で、コラボ曲を共に制作したこともあるスチャダラパーが出演。そのほか、カンダニエルに代わってSE SO NEONが出演するなど、ピンチヒッターを同郷のアーティストが務める例も見られた。

 このように、今年の夏フェスでは多くの代打出演があった。さらには、代打出演したバンドが別のフェスでは代打出演してもらうというケースも生まれている。裏を返せば各フェスで代打出演が必要になるほどコロナが蔓延しているということでもあるので、予断を許さない状況とも言える。しかしながら、ネガティブにもなりえる状況の中で、こういった形でシーンを盛り上げ、ドラマを生み出せることが大きな希望とも言えるのではないか。各位で支え合いながら、一歩一歩シーンを継続させてきたからこその結果だった、そのように思うのである。

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