Weezer、多作なクリエイティビティは“春夏秋冬EP”で新局面へ スタンダードかつ奇想天外な『SZNZ: Summer』を聴いて

Weezer『SZNZ: Summer』レビュー

 Weezerの多作ぶりが止まらない。今年は春、夏、秋、冬、それぞれにおいて1枚ずつ『SZNZ / シーズンズ』と題したEPをリリースすることを発表し、3月20日には『SZNZ: Spring / シーズンズ:スプリング』を配信リリース、そして6月21日には『SZNZ: Summer / シーズンズ:サマー』を配信リリースした。6月21日は、2022年の北半球での夏至の日にあたり、サマーシーズンのはじまりとされる日で、そこに合わせてリリースするとはなんとも折り目正しい。なお、国内盤CDも『SZNZ: Spring / シーズンズ:スプリング』が7月6日に、『SZNZ: Summer / シーズンズ:サマー』が本日8月3日にリリースされた。

 もともと、近年はコンスタントに作品をリリースしていたWeezer。その勢いが加速したように感じたのは、フルオーケストラを取り入れた『OK Human』、Van Halenにリスペクトを捧げた『Van Weezer』という、対極に思える作品が立て続けにリリースされた2021年だ。コロナ禍により、制作に向き合うこととなった状況も関わっているだろう。しかし、それ以上に今のWeezerからは、「アイデアがあふれ出て止まらない!」といった印象を受ける。思えば、先述した2作もある種のコンセプトアルバムになっており、遡ればWeezer史上初めてリヴァース・クオモがピアノのみで曲を書いた『Weezer (Black Album)』(2019年3月)と、マイケル・ジャクソンからBlack Sabbathまで好きな楽曲を思い切りカバーした『Weezer (Teal Album)』(2019年1月)も、コンセプチュアルな2作だった。

 様々な音楽への深い造詣や、広い視野を持っていることによる、冴えた閃き。そして、それを形にする表現力とスピード感。今のWeezerは、そういった器用なことを成し遂げられるバンドなのだと改めて思う。昔の言い回しを引っ張り出して恐縮だが、“泣き虫ロック”と呼ばれ、自分たちの感情が爆走するタイミングで楽曲を生み出し、だからこそ行き詰まることもあり、そんなすべてが赤裸々にリスナーに見えてしまっていた、あの頃の不器用なWeezerとは違うのだ。そんなこと、だいぶ前からわかっていたつもりだったけど、ここ最近のコンセプチュアルな作品の連打でトドメを刺された気がする。

 でも、あの頃の不器用な彼らが大好きだった私でさえ、ここ最近の作品のアイデアとクオリティには、「こう来たか!」と引き込まれずにはいられない。その究極が『SZNZ / シーズンズ』シリーズだ。なんと言ってもテーマは四季だけではない。まず、アーティスト写真を見てほしい。これまでも彼らのアーティスト写真からは、時折かなりのインパクトを与えられてきたけれど、今回はなんと古代。そして音楽そのものにおいても、古代と近代が融合されている。さらに四季を描いた音楽と言えば……というところで、ヴィヴァルディの『四季』からインスピレーションを受けたことも明らかにされており、『SZNZ: Spring / シーズンズ:スプリング』の「Opening Night」から聴こえるのは、ヴィヴァルディ「春」の第一楽章の旋律。その旋律に誘われて入り口をくぐると、春の陽光のような全7曲が輝いている。クラシカルな重みをポップに昇華した、春の日々に寄り添う一枚は、コロナ禍を経て四季を味わう喜びを感じている空気にぴったりだった。

Weezer - Opening Night (Audio)

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