玉屋2060%(Wienners)×ヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)、対バンを前に語り合う ライブや楽曲制作での新たな気づき

玉屋2060%×ヤマサキセイヤ対談

キュウソとの対バンから気づいたことも

──Wiennersの音楽性はどのように生まれていったのでしょうか?

玉屋:Wiennersを始めた当初に影響を受けていたのはYOUR SONG IS GOODのサイトウ"JxJx"ジュンさんがやっていたFRUITYやSCHOOL JACKETS、いわゆる“西荻系”。同時に、その時期に流行り始めたネオ渋谷系にも影響を受けていて。なかでもPlus-Tech Squeeze BoxというユニットはWiennersに多大な影響を与えていますね。そういうピコピコした感じとヒップホップのサンプリング文化を合わせて、パンクの精神で吐き出すようなバンドが聴きたくて探していたんです。でもいなくて。だったら自分でやろうと思って始めたのがWiennersです。でも当時、アンダーグラウンドのパンクバンドに女性の鍵盤とサンプラーがいるのは異色で、それだけで舐められてた。でもだからこそ余計に俺らはポップに行くという提示にもなって。

ヤマサキ:へえ。

玉屋:概念を壊していくというものがパンクだと思ってたから。「そんなのパンクじゃない」って言われていたけど、「表面だけ見て『パンクじゃない』って言うお前のほうがパンクじゃねえな」みたいな(笑)。そういうマインドも含めて、パンクバンドに対するカウンターカルチャーの気持ちがあった。最近はようやく、もっと噛み砕いて、曲の中で説明するようになったから、曲の尺がみんなと同じくらいになってきたけど、当時は1分超えたら長いと思ってたくらいだった。

ヤマサキ:よく1分以内で切り上げられますね。

玉屋:イメージとしては、3~4分ある曲を1分にするんじゃなくて、3~4分ある曲をギュッとして圧縮するみたいな。

ヤマサキ:とにかく詰め込みまくる?

玉屋:そうそう。空気も隙間も入ってない、ただの塊みたいな。それをガーっとやって、お客さんにも伝わってると思ってたんだけど……今考えると全然伝わってなかったんだよね。

ヤマサキ:初見のお客さんが大変ですよね。

玉屋:そう。俺らとしては「カッコいいのに、なんで伝わらないんだ」って思ってたの。そんなときにキュウソと対バンしたから、「俺らのライブが全然伝わってないのって、そういうことだったんだ」って。ちゃんとお客さんにわかるライブをして、自分たちでお客さんを引き込まないといけないんだって教えてもらった。

ヤマサキ:ほんまに逆っすね。僕ら、そのとき「DQNなりたい、40代で死にたい」を7分やってましたから。もう隙間だらけですよ(笑)。

「盛り上げなくていい」ことで生まれたライブでの変化

玉屋:キュウソって、“関西ゼロ世代”の中にはいたの?

ヤマサキ:その世代とは全然絡んでいないんですよ。友達いなかったんで。っていうかムカついてたんです、周りのバンドに対して。「売れてないくせに酒飲んでんじゃねえ」みたいな(笑)。みんなは貯金のない中、俺、バイトの給料で400万円くらい貯金してましたから。で、ライブでめちゃくちゃして、「お前らより金も持ってるし、ライブではむちゃくちゃしてるぜ」って、心の中でマウント取ってました。

玉屋:すげーわかる。俺も、周りのバンドに対して「売れてもねえのに」っていうのはめっちゃ思ってて。好きだからこそ、村みたいになっちゃうのが悔しかった。「10人しか入ってないライブハウスで政治の批判をしても何も動かないのに。もっとデカい拡声器を持てるようにならないと」って。だからWiennersは結成当初から明確に売れたいと思ってた。誰もが知ってるようなバンドになれば、それこそ、当時やってた1分に満たないような音楽が“カッコいい”になる。俺がカッコいいと思えるものを届けるためには、ちゃんと売れないといけないなって。キュウソはそれに気づくのが早かったし、性にも合ってたから早くから人気が出たんじゃないかな。

──ライブの爆発力に定評のある2組ですが、コロナ禍になってライブパフォーマンスに対する気持ちの変化や気づきはありますか?

ヤマサキ:今までのようにライブができないから、めっちゃフラストレーションが溜まっています。同時に、コロナ禍で「自分はミュージシャンだな」と思うようにもなって。何年もずっと力技でやってきたんで、その力技を奪われたときに、「俺、ミュージシャンやったわ」って。ギター弾かんといかんし、歌も歌わんといかんから。特にコロナ禍初期の頃は、お客さんもじっと見ている感じだったので、品評会みたいで苦しかったですね。

玉屋:実は俺は逆で。これまではお客さんを盛り上げたい、盛り上げなきゃと思ってたんだけど、コロナ禍になって、逆に盛り上げちゃいけないという状況になったときに「あ、煽らなくていいんだ」ってまず思った。自分たちの演奏と、自分たちの音楽だけで気持ちよくなっていいんだって。そう思ってステージに立ったら、すごく楽だった。ライブってこんなに気持ちよかったんだって。気持ちよく演奏できればグルーヴも増して、心も高ぶってきて、それが自然と盛り上げるという行為につながるんだよね。

ヤマサキ:確かに「盛り上げなくていいんだ」と思う瞬間は、僕もありました。これまでライブでやれなかった曲ができたりするし。

玉屋:わかる!

ヤマサキ:そういう曲をやるとお客さんもすごく喜んでくれるし。モッシュがないから、最近のライブでは最前列に子供がいたりするんですよ。

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