『ベイビー・ブローカー』出演で話題のイ・ジウン=IU “国民の妹”として支持される背景

 カンヌ国際映画祭で話題を集めた是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』が、現在公開中だ。ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナといった韓国の実力派俳優たちが勢ぞろいしたヒューマンドラマへの賛辞の声が相次ぐ中、未婚の母親役を演じたイ・ジウンにも大きな関心が寄せられている。

 K-POPファンであれば、彼女が俳優業だけでなく、歌手=IU(アイユー)としても華々しい活動をしていることをご存じだろう。シンガーとしてのデビューは2008年。キャリアは相当なものだ。しかしながら最初から順調だったわけではなく、キュートなルックスの影響もあったのか、当時は実力の高さに注目するリスナーは少なく、今に比べて人気もそれほど高くなかったように思う。

 大きな転機が訪れたのは2010年。直前にアイドル路線にシフトしたことで知名度が上がった彼女は、同年末に発表した「Good Day」の大ヒットで本格的なシンガーとして認められる。ミュージカル風の爽やかなメロディラインを持つこの曲は、IUの確かな歌唱力を広く知らしめ、同時にオッパ(お兄さん/韓国で年上の男性に親しみを込めて呼ぶ言い方)が好きだけど告白できずにいる少女の気持ちを綴った歌詞のおかげもあり、“国民の妹”と呼ばれるようになった。

IU (아이유) _ Good Day (좋은 날) _ MV

 勢いに乗ったIUは、ステップアップを目指して演技の世界にも進出。その第一歩となるのが、ペ・ヨンジュンとJ.Y. Parkが共同プロデュースした学園ドラマ『ドリームハイ』(2011年)だ。ここでの彼女は、歌の上手さで芸能高校に入学したにもかかわらず、ダイエットができなかったため入試クラスに入れられてしまう女子高生の役を演じた。振り返ってみると、同性の圧倒的な支持を獲得できたのは本作の出演がきっかけだったのかもしれない。

 以降は歌手と俳優を両立させながら、コンスタントにシングルやアルバムをリリースしていく。ここで押さえておきたいのは、オリジナルナンバーはもちろん、ドラマの挿入歌でもカバーソングでも、ヒットしなかった曲がほとんどないという点である。さらにすごいのは、いずれの曲も聴き手の記憶に残り続け、愛され続けているのだ。それはヒットチャートを眺めていてもよくわかる。

 具体的な例として、韓国の有名な音楽ランキング・GAON(ガオン)の2022年2週目のデジタルチャートを取り上げたい(※1)。この直前にIUはEP『Pieces』をリリースしており、上位には同作の収録曲すべてが入っている。驚くのはこれからで、他にも彼女が過去にリリースした曲が多数ランクインしており、その合計はトップ100位以内に12曲。1割以上がIUの関連曲だ。

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