キタニタツヤ、音楽活動の原動力を得て次なる景色へ 底知れないパワー放ったワンマンツアー最終日

 また、キタニは音楽活動を続けていく上での苦悩も明かした。

「俺が音楽をやる意味はないのかもしれないと思ったりもした。俺じゃなくてもいいじゃんって、すんなり受け入れてしまう瞬間がある。それが一番怖いんだけど」

 見渡せば多くの作品やアーティストが存在し、なおかつ誰もがそれらにアクセスしやすくなっているこの時代。キタニの抱えるこの諦めにも似た葛藤は、この時代を生きる表現者が陥りやすいものと言えるだろう。だが、そんななかで救いになったのが、彼の音楽を聴くリスナーの存在なのだという。

「こうやってみんなと向き合うと、俺の言葉で、俺じゃないとできないことで、やってきた正解もあったんだなってすごく思った。これから壁を乗り越えるなかで、今日の記憶はすごく宝になる。みんなとこれからもいろんな景色を見ていきたい」

 聴いてくれる人の存在こそ、活動の原動力。力強くこう話した後、最後は「プラネテス」と「ちはる」を歌唱した。彼の悲痛な叫びが歌になり、歌詞になり、音になって会場全体に響き渡る。すると客席からステージへ向けて、惜しみない拍手が送られた。彼の思いは、まさに人へと伝わったのだと思う。

 多くの悩みや葛藤を抱えながら過ごした彼の音楽生活は、筆者の想像をはるかに超えるものだと感じる。しかし今回のツアーを境に、彼の活動はどことなく良い方向へと動いていきそうな気がするのだ。そんなきっかけとも言える一夜に立ち会えたことを嬉しく思う。

※1:https://realsound.jp/2022/05/post-1036096.html

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