センチミリメンタル、2つの表題曲で伝える“孤独に寄り添うやさしさ” 温詞ならではのメッセージが光る1枚に

 2曲目の「東京特許許可局」は、バンドサウンドにストリングスの旋律がゆったりと絡むミドルバラードで、叶わなかった恋を歌った曲だ。最も気になるのは「東京特許許可局」というインパクトあるタイトルだろう。この言葉はそのまま歌詞に出てくることはないが、〈あのへんてこな 早口言葉〉と違う言い方で登場。その前後も踏まれて解釈すると、「東京特許許可局」というワードは言えなかった言葉、伝えられなかった想いの象徴としてタイトルに掲げられているように考えられる。早口言葉くらいでしか見たことがないこのワードに、こんなにも切ない意味合いが付与される日が来るなんて誰が予想しただろうか。このアイデアが浮かんだ時点でソングライターの勝利だ。

 また、〈そんなものないんだって〉という何かを諦めたような歌い出しに想像を掻き立てられるし、その上で1番Bメロの始まりは〈漠然と信じていたもの〉、サビの始まりは〈ありもしない幻想〉と、冒頭であえて抽象的に歌った〈そんなもの〉の存在が聴き進めるうちに少しずつ判明する構成になっているのが秀逸だ。そしてこの曲は、永遠なんて存在しないと頭では分かっていたはずなのに、それとは裏腹に“まさかこの恋に終わりが来るなんて……”と悲しみに打ちひしがれている主人公の独り言のような歌である。1stアルバム『やさしい刃物』のレビューで“センチミリメンタルの音楽は人間の内面にある矛盾を肯定してくれる”という趣旨のことを書いたが、この曲もまた、“矛盾”に苦しみ人知れず涙する人に寄り添ってくれるやさしさを持っている。

センチミリメンタル 『東京特許許可局』 Music Video

 「光の中から伝えたいこと」と共通しているのは“夜”のモチーフだ。悩みの夜を経験した身から発せられる〈正しい夜を経験したから/気付けた小さな灯りがある〉(「光の中から伝えたいこと」)と、夜の闇の中から呟かれる〈そんなこと どうだっていいんだ/言い聞かすんだ/腰掛ける 夜の温度のガードレール〉(「東京特許許可局」)では主人公の置かれている状況が異なるが、「光の中から伝えたいこと」が共に収録されているからこそ「東京特許許可局」の主人公が救われるし、「東京特許許可局」が共に収録されているからこそ「光の中から伝えたいこと」で聴き手に向けられる言葉の説得力が増している。つまり、この2曲が両A面シングルとしてリリースされていること自体にもメッセージが込められているのではないだろうか。

 夢に足掻いているのか、恋に破れたのか。涙のあとに未来は咲くと意志を持って伝える歌か、悲しみに暮れているのはあなただけじゃないと暗に伝える歌か。そのベクトルは異なるが、「光の中から伝えたいこと」も「東京特許許可局」も孤独な夜にそばにいてくれる曲である点は共通だろう。そんな2曲を収録した今作は、センチミリメンタルのコアの部分を純度高く、そして新しいアイデアとともに形にしたシングルと言えそうだ。

※1:https://bakuten-pr.com/music/

■リリース情報
センチミリメンタル 4thシングル
『光の中から伝えたいこと/東京特許許可局』

・通常盤[CD+BD]¥2,000(税込)
・期間生産限定盤[CD+BD]¥2,200(税込)
※アニメ絵柄描き下ろしジャケットによるトールケースデジパック仕様

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【CD】
1.光の中から伝えたいこと
2.東京特許許可局
【BD】
1.光の中から伝えたいこと Music Video
2.東京特許許可局 Music Video

センチミリメンタル HP

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