ChouCho、デビュー10周年記念ツアーで代表曲を惜しみなく披露 アニソンとファンへの感謝を歌ったステージ
2021年にメジャーデビュー10周年を迎えたChouChoが、ライブツアー『ChouCho 10th Anniversary Tour 〜ChouCho the BEST〜』を開催。その東京公演が6月25日、ヒューリックホール東京で行われた。「1曲1曲、10年分の感謝を込めて、歌っていきます」。ChouChoが歩んで来た10年が、5周年までとそれ以降、そして10年を通して携わってきた代表作の楽曲という、三部構成のような形で表現されたステージになった。
昨年リリースした10周年ベスト盤『ChouCho the BEST』のリードトラック「Aurorise」で幕を開けると、会場にはアーティストカラーであるグリーンのペンライトが一斉に点灯し、スケールの大きなサウンドが場内に広がった。アニソンシーンで夢を叶えた喜びが歌声に溢れ、会場を見渡してうれしそうに顔をほころばせる。
続いて、今年放送10周年を迎えるアニメ『氷菓』OP主題歌で、ChouCho名義になって最初の楽曲「優しさの理由」、そしてまだ“ちょうちょ”名義だった頃の楽曲「Authentic symphony」、さらにメドレー形式で「Elemental World」「空想トライアングル」「空とキミのメッセージ」など。少しずつ時間を遡るように楽曲を歌い繋ぎ、吹き抜ける風のように爽やかな歌声が広がった会場。ファンはアニメの思い出と共に、彼女の歌声を堪能していたことだろう。
ChouChoは歌い手の先駆け的な存在としてニコニコ動画で人気を集め、2011年にアニメ『神様のメモ帳』OP主題歌「カワルミライ」でメジャーデビューした。10年の活動において前半の5年と後半の5年での違いは、5周年以降は自身で作詞作曲を手がける楽曲が多くなったことだと話す。ライブ中盤は、そんな彼女が作詞作曲を手がけた様々な楽曲が披露された。まずは、初の楽曲提供となった仲村宗悟「Here comes The SUN」をセルフカバー。「原曲とは少し違うアレンジも含めて楽しんでください」と述べ、ギターがメインのエモーショナルな原曲とは異なり、ピアノとストリングスのドラマチックな編曲によって、どこか切なさも感じさせる歌声を聴かせた。
「ここからはディープなChouChoワールドをお楽しみください」との言葉で、変拍子やどこかプログレッシブロックを感じさせる、独自のアレンジが施された楽曲が並んだ“今”のChouChoを感じさせるコーナーに突入。「灰色のサーガ」をはじめ、彼女が作曲する楽曲はメロディ先行であるため、編曲の際に譜面に起こすと自然と変拍子になってしまうという。理屈よりも歌い心地や聴き心地を優先するのは、“歌い手”出身ならではの感性かもしれない。
「hide and seek」は、人と人の距離感を“かくれんぼ”に例えた、独特なリズムが特徴のR&B系の楽曲。どこかダークで空間的なサウンド感が、不思議な浮遊感を生み出す。ChouChoは身体を揺らし、世界観に浸りながら歌った。また、「spilled milk」は、とあるミュージカル映画を観て、主人公たちの出会いのシーンに感銘を受けて作ったという。美しいボーカルが映える温かくも悲しいバラードで、観客は静かに目を閉じて歌声に聴き入っていた。いずれは、映画やミュージカルでも、彼女の歌を聴いてみたいと思わせてくれた。
そんなChouChoワールドを支える“ChouChoバンド”には、アニソンシーンにとどまらず、J-POPやバンドシーンなどでも活躍する名うてのミュージシャンが名を連ねた。ChouCho楽曲で編曲を手がけるバンドマスター/キーボードの村山☆潤を筆頭に、水樹奈々やAimerのライブでも活躍するギターの佐々木”コジロー”貴之。コレサワやアイナ・ジ・エンドなどの楽曲でも演奏するベースのなかむらしょーこ。ずっと真夜中でいいのに。、miletなどの楽曲で活躍するドラムスの河村吉宏。そしてバイオリンは、メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』のMorfonicaのメンバーとしても活動するAyasa。昨年の配信ライブと同じメンバーで、ライブ中盤のバンドセッションでは、テクニック満載の演奏を繰り広げて会場を沸かせた。
MCでは、作曲は毎回大変で楽に作れたことは一度もなかったと話し、「苦労して作ったからこそ、みなさんに聴いていただける喜びが大きく、その曲を好きだと言ってもらえた時はやりがいを感じて、もっといい曲を作りたいと思うモチベーションになる」と答える。ChouChoファンには音楽マニアも多く、変拍子やディープなサウンドはむしろ大歓迎。この日もChouChoの生み出すディープな世界観と、繊細さとダイナミックさを兼ね備えた圧倒的な演奏に、多くのファンが身を委ねていた。
これまでにレコーディングしてきた曲は、楽曲提供含め90曲近くあるとのこと。タイプの違う幅広い楽曲があり、それはアニメに携わってきたからこそで、「アニメ作品の強い個性や魅力に引き出されるように、歌ったり曲を作ったりしてきた」とコメント。アニメの中でも、『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズと『ガールズ&パンツァー』シリーズの楽曲たちは、10年を通して彼女の代表作と言える作品だ。