鬼龍院翔、即興投票ライブから見えた全力のエンタメ精神 38歳バースデー飾る新曲サプライズ披露も

 6月20日、ゴールデンボンバーのボーカル・鬼龍院翔による『もう誕生日に24時間ソロキャンプ配信なんてしない こんにちは大阪・こんばんは東京バースデーライブ』が開催された。


 この日、38歳の誕生日をむかえた鬼龍院。タイトルにもあるとおり、一昨年と昨年と2年連続でバースデーライブを開催できず、ソロキャンプの模様を公式YouTubeチャンネルで生配信していた彼だが、いずれも悪天候に見舞われ散々な目にあい、その可哀想な姿がSNSやネット記事を中心に大きな話題を呼んでいた。そんな梅雨前線が生み出した悲劇はもうおしまい、ようやく待望のバースデーライブが実現した。今年は来場したファンから楽曲のリクエストを募り上位15曲を披露するという、山の天気と同じくらいセットリストが予想できないライブを大阪(昼公演)と東京(夜公演)で行った。本記事では豊洲PITで行われた東京公演をレポートする。

 「誕生日でも結婚式でも使える歌」のカラオケバージョンが流れる場内では、楽曲の投票を終えた観客たちが開演を心待ちにしていた。そして開演時刻になると、「キユーピー3分クッキング」のテーマ曲(正式名称「おもちゃの兵隊の行進曲 Parade of the Wooden Soldiers」)が流れ始める。食材やキッチン用品が鎮座するテーブルとともに、「ハッピーバースデー! 鬼龍院翔でーす」と笑顔で登場する鬼龍院。拍手やゴールデンボール(音の鳴るゴムボールで、声が出せないライブで拍手や声援の代わりに使用されるゴールデンボンバー公式アイテム)と笑顔で迎える観客たち。

 なぜクッキングなのか。それは開演直前まで投票を募っていたため集計が間に合わないから。「OA(オープニングアクト)」ならぬ「OC(オープニングクック)」として、自身がクックパッドにレシピを公開している牛すじ煮込みを調理することに。途中コバエに邪魔されながらも、つつがなく準備を終えてしまった鬼龍院。結局時間が余ってしまい、「これから自分の持ち歌をうたうから……」と、西城秀樹「傷だらけのローラ」(GACKT風)をアカペラで熱唱。ライブが始まる前から、彼の過剰なサービス精神が窺える一幕であった。

 ようやく集計が終了。投票数が同率の曲が複数あるため、本来なら15曲のところ合計16曲になることを告げ、「お得なライブ」とコメント。そしていつもの「PAさ〜ん、お願いします」の声で、「デートプラン」のキラキラしたイントロが流れると、待ってましたと言わんばかりに立ち上がる観客たち。そして「煙草」、「恋人は教祖様」、「君といつまでも」と、同率13位の4曲を披露した。どれも10年以上前の曲ばかりで、「筋金入りの金爆(ゴールデンボンバー)のファンじゃねえかよ!」と満面の笑顔になる鬼龍院。

 そして、同率10位の3曲を確認するも、「えっ?」と何故か困惑の表情を浮かべる鬼龍院。いったい何が起きたのか、観客はその理由を10分後に理解することになる。韓国の5人組男性アイドルグループ・大国男児への提供曲「Love Days」ではうろ覚えのダンスも披露し、会場内はあたたかい空気に包まれる。その空気は「泣かないで」でさらにエモーショナルに昇華される……ところであったが、「なんでこの曲入れたぁ!?」という鬼龍院の叫びから始まったのは、「童貞が!」。ひたすら〈童貞が!〉と繰り返しながら上半身の服を脱ぎ、生中継していたニコニコ生放送のコメント欄で鬼龍院の背中に書いてほしいワードを募集。スタッフの手により“ドM”、“ハピバ”などの落書きが刻まれていく。「これが見たかったのか! 満足かい!」と、半ばヤケクソに近いパフォーマンスをやりきった。なお、鬼龍院はその後「組織票? 『童貞が!』グループいるでしょ? まあ、好きだからこそ、僕が困っているのを見たいんでしょうね……」とこぼすと、観客たちからの大きな拍手が巻き起こる。発声禁止のライブながらも、その光景が鬼龍院の言葉への“答え”をなによりも雄弁に語っていた。

 いそいそと服を着直すと次のセクションへ。珠玉のバラード「悲愴」、リスナーの心に訴えかけてくる「イヤホン」。そしてMCでは「もうふざけた曲はやらないです」と観客に着席を呼びかけ、「忙しくてよかった」や「広がる世界」、温かい手拍子が響く「らふぃおら」、「あしたのショー」といった、じんわり心の襞に染み込んでいくような曲が続き、さすが“筋金入りの金爆ファン”による投票ライブといった趣きだ。

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