Ms.OOJA、歌い手視点で語るシティポップと昭和歌謡の魅力 泰葉や松原みきら往年の女性シンガーに惹かれた理由
当時のシティポップって、生きている音楽という感じがする
ーーなるほど、それは面白い考え方ですね。じゃあ、『流しのOOJA』も自然な流れだったんですね。
Ms.OOJA:そうだと思います。今までカバーアルバムをいくつか作ってきたんですが、これは自分で「こういうのを作りたい!」って私が発信して作った初めての作品なんですよ。バーで聴いて、ジャケットの写メを撮ったりして(笑)、虎視眈々と狙っていたんです。だから、2、3年くらいは考え続けていました。
ーー幅広い選曲なんですが、女性シンガーの曲ばかりですね。
Ms.OOJA:それは偶然なんですけれど、実は実際に歌ってみて決めたというのはありますね。バーにピアノを弾く人に来てもらって、ちょっとしたゲリラライブをしたんですよ。お客さんがいてもいなくても関係なく、全然うたったことがない歌をいきなり歌ってみるっていうようなことをやったんですが、その時の楽曲ですね。歌った中には、まだちょっと早いかなとか、今は違うなとか、そういうのもありましたけれど。
ーー『流しのOOJA』の一曲目が、今回アナログ盤でも復刻されることになった泰葉さんの「フライディ・チャイナタウン」ですが、この曲も昔から知っていたんですか。
Ms.OOJA:実は、「フライディ・チャイナタウン」は全然知らなかったんです。20代くらいの若い子がカラオケで歌っているのを聴いたことがあって、「何?この曲、かっこいい!」と思って。ジャケ写もかっこいいじゃないですか、白いチェアーに座っている写真。これはぜひ歌いたいなって思ったんですよね。
ーーこの曲の魅力はどういったところですか。
Ms.OOJA:とにかく、すごくかっこいいですよね。洋楽っぽいというか海外っぽさを感じさせながらも、すごく”和”なんですよ。そのさじ加減が本当に絶妙だなと思います。新しくてかっこよくておしゃれなんだけど、懐かしくて”和”な感じで、違和感なく聴ける。作曲は泰葉さんですが、作詞は荒木とよひささん。言葉選びもすごいんですよ。そもそも「フライディ・チャイナタウン」というタイトルも不思議ですし(笑)。歌詞も〈頬ずれの月明かり〉とか〈私も異国人ね〉とか。
ーーエキゾチックなイメージですよね。
Ms.OOJA:そう、なんか怪しげな雰囲気はすごくよくわかるんだけれど、結局なんだかよくわからない(笑)。でも、「結局どういうことなの?」って思いながら、何度でも繰り返し聴ける。聴くたびに、浮かぶ景色も違うし、すごいなって思いますね。
ーーそういった後から発見した曲は他にもあるんですか。
Ms.OOJA:松原みきさんの「真夜中のドア~stay with me」もそういう感じですね。以前、NHK BSの『新・BS日本のうた』という番組に出演したことがあって、プロデューサーさんが選曲してくださったんです。それまで全然知らなくて、聴いてみたらめちゃくちゃかっこよくて、「こんな曲があったんだ」ってびっくりしたんですよ。でも、前からうちのお母さんがこの曲がすごく好きで、よく「『真夜中のドア』を歌ってよ」と言われていたんですけれど、その時は聞き流していて。「ああ、そういえば言ってたわ」って後から気付きました(笑)。
ーーこの曲も歌詞がよくわからないところがありますね。
Ms.OOJA:そうなんです。恋愛の歌というのはわかるし、何かうまくいっていないというのはわかるんですけど。じゃあ、「真夜中のドア」って何?っていう(笑)。作詞が三浦徳子さんなんですけれど、意味を持たせないのに、意味が通じる歌詞っていうか。じつはすごくドラマチックな女性らしさを出した歌詞だったりするんですよ。言葉の響きや選び方は秀逸だし、当時は作詞と作曲が別々でそれぞれのエキスパートが作っているのがよくわかります。
ーー「フライディ・チャイナタウン」も「真夜中のドア~stay with me」も、ちょっとR&B色が感じられますよね。
Ms.OOJA:そうなんですよ。洋楽の要素を取り入れて、すごく洋楽を意識しながら作っているんだけれど、歌謡のベースというのは失わずに、オリジナリティのある音楽になっていますよね。ただ単に洋楽を真似しているだけじゃなくて、そこにちゃんと歌謡のアイデンティティを持ってアウトプットしているので、すごくソウルフルでかっこいいんですよ。私は洋楽も好きで聴くんですけれど、いざ自分が歌うとなったら、洋楽の真似ではなく、自分の中にあるJ-POPや歌謡曲といったベースにあるものをちゃんと表現するのが好きなんです。洋楽に対抗するなら、そこしかないじゃないですか。だから、洋楽のヒップホップやR&Bを取り入れても、自分の音楽の背景にあるのは歌謡曲やシティポップなのかなとすごく感じますね。
ーー今回、「フライディ・チャイナタウン」のアナログ以外にも、CD再発がたくさんリリースされるのですが、気になる作品はありますか。
Ms.OOJA:どれも楽しみですけれど、大橋純子さんは聴いてみたいですね。「シルエット・ロマンス」を歌わせていただいたんですけれど、とにかく歌が上手い人ですよね。日本のソウルというか。曲もおしゃれですし。この間、歌番組に出たときにリトルブラックドレスちゃんが歌っていた「シンプル・ラブ」とかめっちゃかっこいいなって思って。あれはうちのお母さんからもリクエストがありました(笑)。
ーー「シンプル・ラブ」もそうですが、大橋純子さんは日本語じゃなければ洋楽といってもいいくらいです。
Ms.OOJA:でも、それをちゃんと日本語でやっているのがめちゃくちゃかっこいいですよね。大橋純子さんだから歌える、みたいなところもある。
ーー今回の再発キャンペーンをきっかけにシティポップに触れる方々がたくさんいると思うのですが、OOJAさんとしてはどのように楽しめばいいと思いますか。
Ms.OOJA:当時のシティポップって、生感というか、生きている音楽という感じがするんです。当時の録音技術も理由のひとつですよね。アナログの意テープで録音している時代ですし、生楽器、生歌の良さが表れていると思います。生の良さは本当に魅力的ですよね。歌っている風景、レコーディングしている風景まで浮かんでくるというか。そういったスタジオの空気感を楽しみながら聴くといいんじゃないかな。私はそうやって楽しもうと思います。
■リリース情報
<CITY POP Selections> by UNIVERSAL MUSIC
《第一弾》
2022年6月29日発売/全25タイトル/¥1,650(税込)/限定
《第二弾》
2022年8月31日発売/全25タイトル/¥1,650(税込)/限定盤
特設サイトはこちら
■Ms.OOJAリリース情報
Cover Album「流しのOOJA 2 〜VINTAGE SONG COVERS〜」
2022年秋発売予定
Ms.OOJA Official HP
https://msooja.jp/