Lucky Kilimanjaro、ノンストップライブに宿る“タフな信念” 極上のダンスミュージックを届けたパシフィコ横浜公演レポ

 Lucky Kilimanjaro(以下、ラッキリ)が全国7カ所を巡るツアー『TOUGH PLAY』ファイナル公演をバンド史上最大キャパのパシフィコ横浜で6月19日に開催した。

Lucky Kilimanjaro

 コロナ禍の中、先の見えない心細さから徐々に本来自分が好きだったこと、今、好きなこと、やりたいことへと誰もが気持ちがシフトしてきたことだろう。そのことをビビッドに、時に少し先導するスタンスで表現したのが新作『TOUGH PLAY』だ。ラッキリのリスナーへのサジェスチョンは「頑張れ!」でも「今すぐそのしんどさから全力で逃げろ」でもない。ストレスから少しの時間、距離を置き、再び現実世界で生きていくための“ダンスの時間”を広く提供することだ。

熊木幸丸

 開場BGMで「I’m NOT Dead」のハウスとドゥーワップをミックスするアイデアのもとになったThe 5.6.7.8's「Woo Hoo」や、カルヴィン・ハリスが流れたり、オンステージ以前もツアー『TOUGH PLAY』にインクルードされているニュアンス。メンバーも「I’m NOT Dead」のビートに乗せて登場し、まるでアミューズメントパークのショーの開幕のように6人が横並びでお辞儀をしてから、歌や演奏に入っていく。立て続けにAメロはサンバのリズムで主にドラムとパーカッションのみでアレンジした「踊りの合図」へ。熊木幸丸(Vo)はステージの左右まで進んで、オーディエンスを鼓舞する。主に『TOUGH PLAY』からの選曲で構成しているが、SEで「太陽」につなぎ、より誰もが自由に踊れるムードを作り出した印象だ。

 クラブでオールしているような時間の経過を感じさせたのは「楽園」からの流れで、歌詞にある〈くたびれたアディダス〉は後で効いてくる。そうした“身近なフェイバリット”がリスナーのリアルな日常と確かな接続を可能にしているのだ。ダンスフロアのムードは続く「足りない夜にまかせて」につながっていき、少し寂しいムードを一転させる「ひとりの夜を抜け」の歌い出しが聴こえた時の眼前が開けるインパクトは素晴らしかった。〈くたびれたスタンスミス〉を履いた主人公はここまで歩き続けてきたんだ、と自分ごととして体感できる流れだったのだ。

 ノンストップのダンスタイムの中に遠雷のようなSEを挟み、「雨が降るなら踊ればいいじゃない」へ。ステップを踏みつつクラップを響かせるフロア全体が生き物のようにうごめいているのが、ライブハウスというよりクラブ的。続けて「SAUNA SONG」のイントロが流れた際には声こそ出せないものの、意外さと歓喜が拍手になって表れていた。新曲と既発曲の配置が単にBPM重視なだけではなく、好きなものを守る強さを示した『TOUGH PLAY』をリリースした後だからこそ、一度ごちゃごちゃに絡まった気持ちをサウナでリセットしようと歌う「SAUNA SONG」のリアリティも増す。

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