Lucky Kilimanjaro、ノンストップライブに宿る“タフな信念” 極上のダンスミュージックを届けたパシフィコ横浜公演レポ
少し内省的なパートから「ぜんぶあなたのもの」でグッとロマンチックなパートに入っていく。シンセの透明感がスペーシーで、熊木のファルセットと溶け合う。「初恋」を経て、SEのストリングスがスタンダードなミュージカルのような趣きを添える「MOONLIGHT」へ。大瀧真央(Syn)が「みんな踊れてる?」とフロアに声をかけ、スタートした「Burning Friday Night」では山浦聖司(Ba)の生ベースを軸に、松崎浩二(Gt)のソロなど、バンドの生演奏がクローズアップされる。生音を削ぎ落とし、緩急をつけたライブアレンジの中で、生身を感じる音像が際立った場面だ。
インタールードを経て、ディープにハウスミュージックへ没入させる「ON」ではレーザーとミラーボールに照射され跳ね返る光の粒が自意識を吹っ飛ばしていく。ある種無防備な状態で聴く「無理」や「Headlight」での両極な熊木のモノローグのような歌がしみる。この2曲だけはハイスツールに腰掛けて歌い、熊木のシンガーソングライター的な側面が見えた場面でもあった。
柴田昌輝(Dr)のフロアタムが力強く鳴らされて、「夜とシンセサイザー」がスタート。彼らにとって夜を乗り越えるための象徴はギターでもピアノでもなくシンセサイザーなのだなと毎回感じさせられるこの曲をフックに、熊木が「終盤戦、ここからダンスチューンが続きますよ!」と「エモめの夏」、「週休8日」、「HOUSE」を披露。「HOUSE」のアウトロのサンプリングを「果てることないダンス」のイントロのゴスペル的なリフレインにつなぐ構成はこの日最も大きく膨張し、人力でビルドしドロップする快感に満たされる。パーカッションだけでなく、サンプリングも駆使するラミ(Per)の役割はツアーを経るごとに増えているようだ。
「めちゃくちゃ楽しかったです、パシフィコ。最後まで踊ってくれますか?」という意気揚々とした熊木のMCに窺えるタフさ。1曲目の「I’m NOT Dead」で〈絶対曲げないスタイル〉として踊り続けることを提示し、約2時間かけて本編ラストの「人生踊れば丸儲け」で、〈カッコ悪くたってClap your hands/人生踊れば丸儲け〉という確信に、ここにいるオーディエンスとともにたどり着いたのだ。なんてしぶとく、かつ実践的なスタイルなのだろう。踊り続けることで、強くなれる実感が残る、これが今のラッキリのノンストップライブの真意だ。
アンコールではお馴染みの「350ml Galaxy」のビールで乾杯を経て、7月13日に新曲「ファジーサマー」のデジタルリリースと秋のツアー開催を発表。締めくくりはラッキリの軸を成すメッセージ「君が踊り出すのを待ってる」で、ここから続いていく未来を予感させて終演。自分の“好き”を守るために必要なしなやかなメンタルと、同じ場所で踊り続ける顔も知らない同志たちの存在を獲得して、パシフィコ横浜に集ったオーディエンスは帰路に着いたことだろう。