首振りDolls、ロックンロールを表現し続けた10年 最新アルバムで見せたバンドとしての生き方

 首振りDollsが、6月15日にニューアルバム『DOLL!DOLL!DOLL!』をリリースした。同作は、北九州・小倉で2012年1月に結成した彼らにとって10周年を記念した作品。同時に現体制になって3作目のアルバムとなり、バンドのこれからを左右する重要な作品でもある。そんな記念すべき今作は、 トーキング・モジュレーターを使い、1970年代のハードロックをイメージしたオープニングトラックの「Walk on the Wild Side」やバンドの歩みを感じさせる「スローモーション」など、首振りDollsが10年を経たからこそ生み出すことができたと言える仕上がりになっている。首振りDollsが表現するロックンロールについて聞いた。(編集部)

今やりたいこと詰め込んだ

――気づけば、すでに結成から10周年を迎えるんですよね。

ジョニー・ダイアモンド(以下、ジョニー):あんまり意識はしてなかったんですけどね。

ナオ:言われて気づいたぐらいで、まだまだ若手のつもりなんですけどね(笑)。

――ええ。こちらも若手という認識ですしね。今、首振りDollsとはどんなバンドなのか、自分たちの言葉ではどのように説明します?

ナオ:「どんな音楽をやってるの?」って聞かれたら、「ロックンロールです」って答えるんですけど、ジョニーはこの間、そこでとんでもない質問をされてしまったみたいで(笑)。

ジョニー:ギャルに「どんなバンドしてるんですか?」って聞かれたんで、ロックンロール系のバンドなんですよみたいなこと言ったら、「ロックンロールって何ですか?」って(笑)。一瞬、時が止まりましたね。「あれ? ロックンロールって何だっけ?」って、哲学のように考えてしまって。

ナオ:ロックンロールって何ですかね(笑)?

ジョニー:今後はどうしようか? 渋谷系とか言おうかな(笑)。でも、どう説明していいかわかんなくなっちゃうね。とりあえず聴いてとか、ライブに来てとかしか言えない。

ショーン・ホラーショー(以下、ショーン):ドラム&ボーカル、スリーピース、ロックバンド。

ジョニー:より具体的でわかりやすいね。

ナオ:でも、それを言ったところで、よくわかんないじゃんね。音楽性も特に何かこれといったジャンルの括りがうちはないから。すべてを内包してるのがロックンロールなのかなと。

ナオ

――そうですよね。そのロックンロールが詰め込まれた最新アルバム『DOLL! DOLL! DOLL!』は、どんな構想の下に制作が進められていったのでしょう?

ナオ:10周年らしいアルバムを作らなきゃみたいな気持ちで曲を作り始めたら、筆が止まっちゃったんですよ。だから、結局のところは、やりたいことをやっただけなんですよね。でも、でき上がってみると、10年間やってきたからこそ言えることがあったりとか、結果的に10周年のアルバムになった感じ。気負って作れるものじゃなくて、自然とそうなるんだなって(笑)。

ジョニー:正直、個人的には10周年っていうのはあまり意識することはなくて、どっちかというと、意識するのはショーンが入って3枚目のアルバムということなんですよ。3枚目のアルバムって、名盤になるか迷盤になるか、バンドによって分かれがちというか。

ジョニー・ダイアモンド

――3作目はバンドの真価が発揮がされるなんていう言い方もされますね。

ジョニー:そうそう。だから、『LONDON CALLING』(1979年に発表されたThe Clashの3枚目のアルバム)を目指してはいました。結果、いいものができたなと思います。

ショーン:自分は加入して3〜4年ぐらいなので、バンドの10周年ということを意識することはなくて、本当に今やりたいこと詰め込んだなって感じはしますね。

ショーン・ホラーショー

――最初にできた曲はどれでした?

ナオ:多分、一番古いと言ったら「アイラブユー」だと思うんだけど、最初に形になったのは「童(わっぱ)」かな。ショーンくんがスタジオで弾いてた重たいリフがカッコよかったんですよ。そこで「それ、何かの曲?」って聞いたら、何の曲でもないっていうので、じゃあ、俺たちの曲にしちゃおうみたいな。ただ、最初はメロディが浮かばなかったんですね、その重たい感じのままずっと行きたかったから。あのリフに日本語を乗せるのってすごく難しくて。だから、この曲の構想はしばらく眠ってたんですよ。でも、ある日突然、浮かんできて、急激にでき上がっていった感じでしたね。血湧き肉踊るっていうのがテーマです。

――そういった流れで、作曲のクレジットがバンド名義になっているんですね。

ナオ:そうですね。一応、メロをつけたり、リフ以外の部分とかをやったのは基本的には私かな。でも、そこも含めて、スタジオでみんなでああじゃこうじゃ言いながらやりましたね。

ショーン:僕は太古のリズムーー古いというか、自然とノれる感じを目指して。昔の人が、火を囲んで、わけもわからず、リズムにノってた感じをイメージはしてました。

ナオ:確かにそれっぽいね。

ジョニー:俺の中では踊れる感じというか、最初にスタジオで作業してたときは、ディスコ感があった気がしたよね。でも、曲を作っていくうちにだんだん妖しい感じになって、しまいにレコーディングでは、予定にはなかったエレキシタールとかまで使っちゃって。

ナオ:そこでアジアン感が出たよね。仏教味も出ました、お経っぽいものも入れたし。

ジョニー:エスニック……インド感かな。インドに行ったことはないけど。

――インドに行った経験のある身としても、インドっぽいなと感じましたよ。

ジョニー:じゃあ、狙い通りでしたね(笑)。それならよかった。

――日本の昭和的なお化け屋敷のおどろおどろしさとエスニックな雰囲気が絶妙に融合して、すごく個性的なものに仕上がっている印象ですよ。

ナオ:ありがとうございます。そういうことが言えるようになりたいよね(笑)。

ジョニー:そういう考えで曲を作りたいもんだよね、むしろ(笑)。

ショーン:太古のリズムとか言っちゃってた(笑)。

――いや、それも的確だと思いますよ。首振りDollsの楽曲としても、ちょっと珍しいタイプのものではないですか?

ナオ:そうかも。鼻にかけた高い声っていうか、初めてやった歌い方や声の出し方なんですよね。そうしないと出なかったからなんですけど、それがちょっと不思議な感じでマッチしたんです。何か地獄っぽい感じにしたかったんですよ。そんなところで血湧き肉躍る感じを自分の中でミックスしたら、こんな曲になりましたね。

――この曲ができたからこそ、アルバムの制作がすごくスムーズに進んだ……ということでもないですよね。

ナオ:でもない。この曲ができたから爆発的に……みたいなは、特にないかな。ただ、「ウォンテッド」はデモというか、こんな曲があるよとみんなに聴かせたときから、リード曲っぽいと言われて、そこを軸に考えた感はありますけどね。

――「ウォンテッド」はそれこそディスコっぽいですよね。

ジョニー:ロックディスコ的な。

ナオ:ギターソロの裏のフレーズがロッド・スチュワートの「Da Ya Think I’m Sexy?」です。

ジョニー:あれはプロデューサー(The DUST’N’BONEZの戸城憲夫)の趣味もありますけど(笑)。

ナオ:ドゥクドゥクドゥクから始まるし、四つ打ちだし、俺的にはTRICERATOPSの「FEVER」のつもりなんですよ。わかるでしょ?

――わかります。「FEVER」との連関で言うと、やはり和田唱さんも好きなKISSの「I Was Made For Lovin' You」も思い浮かぶんですよ。

ナオ:そうですよね。同じところを聴いて、同じように日本人がやったから、俺としてはすごく似ちゃったって思ったけど、「どこが似てんだよ」って2人に言われて安心してそのまま出したという(笑)。

ジョニー:ぜひ和田さんに聴いてもらいたいですね。

ナオ:いや、すっげえいい曲だからね、「FEVER」は。

ジョニー:申し訳ないけど、「FEVER」にはかなわんな(笑)。

ナオ:大好きな曲だから、比較対象にされるのはちょっと怖いけど(笑)。

――この曲はベースも特に重要な気がしますね。

ショーン:そうですね。自分的にはやっぱり最初に思い浮かんだのはKISSだったんですよ。首振りっぽい感じのディスコが来たぞと思って。やっていて、すごく楽しかったですね(笑)。ああいうフレーズは好きだし、結構得意ではあるので。

ジョニー:個人的には「FEVER」感もあまり感じなかったし、別にKISSも思い浮かばなかったけど、結構オリジナルな感じで、シンガロングできる曲だから、ライブでもっとよくなりそうな曲だなと思ったんですよね。デモのときからリード曲っぽいって思ったから、とにかく渋谷でウケそうな感じを一生懸命……。

ナオ:なぜかすごく渋谷を意識してる(笑)。

ジョニー:渋谷でウケればどこでもウケると思ってるんで(笑)。売れ線を狙ったというか、今風にしたいなって思ったんですよね。

ナオ:もう時代が繰り返されてるっていうかね。今回は「童」「荊」「NWN」以外の曲は、ほぼ同時にブワッとできたよね。最初はみんな何かアイデアを持ってはくるけど、ちょっと違うかもみたいな感じで、ウダウダした、長くスタジオに入るだけの期間があったんですよ。でも、作曲開始から3週間目ぐらいに、急にそこから抜け出したんです。みんな固まったやつをドドンと持ってき始めて。

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