SNARE COVER、力強さと繊細さを兼ね備える天性の歌声 2年半ぶりの東京公演で響かせた未知の音楽

 2022年5月29日、斎藤洸のソロプロジェクト・SNARE COVERが、主催ライブ『Welcome to my Garden Vol1』を開催した。会場の下北沢ニュー風知空知は、南口商店街のビル4階にあるライブカフェバー。壁面に並べられた本やレコード、観客たちが座るソファや木の椅子、開放的なウッドデッキ、間接照明の灯りでつくられた居心地の良い空間は、外の喧騒を忘れさせてくれる。この日のゲストである秋元リョーヘイによるステージのあと、黒の開襟シャツ姿のSNARE COVERが観客たちの前に姿を現した。北海道を活動拠点にする彼は、東京で有観客ライブを行うのは実に2年半ぶりだという。後のMCで自らを「イエティのようだ」と言ってたが、確かに彼は、“大自然の中から自分の歌を届けに街へやってきたシンガー“という印象だった。

SNARE COVER

 「緊張してる? 大丈夫、僕の方が全然緊張してるよ」と目の前の観客たちに声をかけながら自然な雰囲気で始まったライブだったが、曲が始まると空気が一変する。一曲目は「地球」。力強さと繊細さの両方を兼ね備えた天性の歌声で観客たちの心を一気に惹きつけ、緩急をつけながら壮大な楽曲へと展開していく。SNARE COVERの音楽の大きな特徴でもあるループを使った間奏ではいくつもの音が重なり合い、美しいハーモニーを生み出していた。

 「僕は北海道の自然の中に住んでいて、自然のことや人間愛、人の持つ業を題材に歌っています。時代を切り取ったものを歌えば共感性は高いかもしれないけど、僕は自然の中で育ってきて、それが歌を通してみんなに伝えられるリアリティだから。今後はそれを全国、そして世界に発信することが、僕の歌を伝える鍵だと思います。安心して僕の音楽を聴いてくれたら嬉しいです」。そう真っすぐな言葉で自身の想いを伝えたあとに披露したのは、「tell」。柔らかなアコースティックギターにビブラートを効かせた伸びやかな歌声を重ね、癒しのメロディを奏でる。クライマックスでは人間離れしたハイトーンを響かせ、観客たちを圧倒した。

 続く「Tenbodai」は、SNARE COVERが2012年にリリースした「パノラマ」のアンサーソングだという。パートナーと死別するというシチュエーションを亡くなった側の目線から描いた「パノラマ」に対し、残された側の目線から描いた「Tenbodai」からは、悲しみを乗り越えて生きようとする人間の強さも感じられる。しっとりとした歌い出しから始まり、曲の後半では展望台から見える美しい景色が浮かび上がるようなドラマチックなサウンドへと展開していく。

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