Kroiが“音楽”で撃ち抜いてきたものとは何か 満員のZepp DiverCityワンマンの景色に思うこと

 もはやKroiの視覚的世界の大部分を担っているといえる新保拓人によるステージセットもポップで素晴らしかった。このセットはライブ冒頭に映し出された、メンバーが謎のテレビゲームを始めるオープニング映像に紐づいたもので、ステージ上には様々なモンスターたちとシューティングゲームのような的があしらわれていた。今回のツアータイトル『Survive』の由来が、Kroiメンバー内でブームになったサバイバルゲームから来ていることにも重ねられているのだろう。

 言わずもがな、サバイバルゲームは相手を撃つゲームである。では、手に持った「音楽」という名の銃で、Kroiは何を撃ち抜いてきたのだろう? あるいは、この先何を撃ち抜こうとしているのだろう?――そんなことをZepp DiverCityからの帰り道、電車のなかで「Kroi、すごい人気ですねえ」なんて、この記事の編集者と喋りながら考えていた。「バンド音楽が下火だ」などと言われて久しい時代に、楽器と楽器が絡み合い、人と人がぶつかり合い照らし合う「バンド」という表現形態を見事に謳歌し、音像やビジュアル面も含めて「新たなバンド像」とも言うべきモデルを提示して見せたこと。音楽においても「わかりやすさ」や「速度」が求められる時代にあって、様々なジャンルを昇華した一見難解にも思える音楽性で、見事に魅惑的なポップスを生み出してみせたこと。そして、その豊潤に育まれた5人の「小さな世界」を、内に留めるのではなく、まだ見ぬ誰かに伝えることを諦めなかったことーーこの数年間ずっと、Kroiというバンドが自然と撃ち抜き、打ち破ってきたものがたくさんあるのだ。この日のライブ中、MCで彼らは、アンダーグラウンドなライブハウスで活動してきた自分たちが今、満員のZepp DiverCityに立っていることを感慨深そうに語っていた。そんな彼らの姿を見る誰かの心もまた、確実に撃ち抜かれているはずだ。

 今年の夏に新作フルアルバム『telegraph』のリリースもアナウンスされた。「電信」という意味を持つタイトルは、彼らがより強く何かを伝えたがっていることの表れのように勘繰ってしまうが、どうだろうか。楽しみに待ちたい。

■セットリスト
1.Small World
2.Mr. Foundation
3.sanso
4.Balmy Life
5.Juden
6.selva
7.Page
8.Flight
9.侵攻
10.Monster Play
11.Pixie
12.Never Ending Story
13.Polyester
14.帰路
15.Custard
16.Network
17.Shincha
18.HORN
19.WATAGUMO

En1.Fire Brain
En2.Suck a Lemmon

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