福原遥、1stアルバム『ハルカカナタヘ』から見る歌声の可能性 豊かなサウンドとの親和性に迫る

 と、徐々にアルバム終盤が近づいてきたあたりで、本作の語りどころはここから。順に、清純ロックな「モノクローム」、作詞:YUC’e・作曲:Norによるフューチャーベース「ハンドメイドセカイ」、さらにはYunomiが作詞作曲を手掛けた和メロなエレクトロポップ「箱庭のサマー」と、とにかく遊び心に満ち溢れた楽曲が並んでいるのだ。

 なかでも、後半2曲を手掛けたYunomiらは、ダンスミュージックをテーマにした音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』などに参加するトラックメイカー。ほかにも"Kawaii Future Bass”の代表的アーティストであるSnail’s Houseこそ参加しているものの、本作においては異色の存在で、それぞれの担当楽曲でもいい意味で“好き勝手”なサウンドを繰り広げている。とはいえ、福原のボーカルとトラックの相性はとりわけ抜群だし、その上で彼女の声の質感を大切にしながら、時にはそれを素材として遺憾なくエフェクトを施しているのも見事である。

 だが実は、この終盤3曲はすべて、1st〜3rdシングルに収録済みの既発曲。本アルバムは収録曲順=楽曲のリリース順とはなっていないあたり、何らかの意図をもって曲順も作り込まれているはず。もし仮に、作品全体をエモーショナルな雰囲気で終わらせたいのであれば、メッセージソングを新曲として書き下ろし、ラストナンバーに置くのが最もわかりやすい手法だろう。彼女の純真な歌声を大々的にフィーチャーすることもできる。

 しかしながら、この並びを踏まえるに、福原や制作チーム側が「ハンドメイドセカイ」といったある種のインターネット感あるエレクトロチューンにおいて、間違いない自信を持っていると想像するのも自然な流れではないだろうか。

 そんな『ハルカカナタヘ』を踏まえた次の一手として、本作の新曲群で拡張したポップ路線と、強みの一つであるエレクトロ路線のどちらを選ぶのか、それともまた新たなジャンルに挑戦するのか、気になるばかり。とはいえ、ようやく出会うことができたフルレングスでのアルバム作品。今後の期待感を込めて、今こそあえて宣言しておきたい。福原遥の“ハルカカナタヘ”と続く飛躍は、まだ始まったばかりだ。

※1:菅田将暉、上白石姉妹、池田エライザ……俳優がシンガーとしても求められる理由 ミュージシャンでは出せない歌の持ち味(https://realsound.jp/2020/09/post-622846.html)

■リリース情報
福原遥 1stアルバム『ハルカカナタヘ』
2022年6月8日(水)リリース
配信はこちら

<収録曲>
01.Introduction
02.透明クリア
03.道標 feat. Hiplin & Rin音 (Prod. GeG)
04.シャボンのひと
05.Lucky Days feat. OKAMOTO’S
06.In the park
07.スキップサイダー
08.100万回の「I love you」
09.未完成な光たち
10.風に吹かれて
11.君が好きだって言えたら
12.モノクローム
13.ハンドメイドセカイ
14.箱庭のサマー

<初回生産限定盤>
CD+ビジュアルブック(B5変形版全64P)
¥5,500(税込)

<通常盤>
CD only
¥3,300(税込)

特設サイト:https://fukuharaharuka-music.com/harukakanatae/

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