国内外で強まるロックフェスのポップ化、その背景とは? 浮かび上がるメリットとデメリット
近年、ロックフェスにポップスターがブッキングされ、そのアーティストを“目玉”としてラインナップを固めていくケースが増えているように感じる。2022年で言えば、『コーチェラ・フェスティバル』にハリー・スタイルズがラインナップされ、国内でも『FUJI ROCK FESTIVAL '22』、『SUMMER SONIC 2022』(大阪会場)、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO』などにYOASOBIの出演が決まっているのがひとつの証左だ。また、『グラストンベリー・フェスティバル』ではケンドリック・ラマーやビリー・アイリッシュがヘッドライナーを務めることがアナウンスされ、先日発表された関ジャニ∞の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』出演なども大きな話題を集めている。もちろん、“ロック”の定義はリスナーごとに意見が分かれると思うが、フェス全体のカラーやブッキングの傾向を見ると、ロックフェスのポップ化の色合いは強まっており、国内外問わずジャンルレス化していると言えそうだ。
なぜ、このような変化を遂げているのだろうか。
海外だと、いわゆるバンドやロックが年々ヒットチャートから後退しつつあることがわかる。これが、ひとつの要因ではありそうだ。というのも、フェスのスケールが大きくなると、どのアーティストがどれくらい集客するのか、という観点からブッキングすることが興行上重要になってくる。特にフェスの目玉となるヘッドライナーともなれば、なおのことシビアだ。結果、チャート上位=人気がある=集客が見込めるという判断から、現在ポップアクトのブッキングが目立っているのではないだろうか。なお、国内の場合は海外に比べるとヒットチャートにおけるバンドやロックジャンルの存在感は強いが、それでもより多くの集客を要しているフェスでは、前述したように大衆的な認知を獲得しているポップアクトの比重がやはり強まっている印象を受ける。
また、フェスの需要の変化もアクトの並びを変えた一因であるように思う。というのも、『コーチェラ』や『フジロック』が開催され始めた90年代後半は、“音楽を聴くためにフェスに行く”層が多かった印象である。かつ、音楽が主役であるため、出演するアーティストのジャンルの統一性が集客にも繋がっていた。
しかし、フェスは年を増すごとにレジャー化の色合いが強まっていき、ある種、花火大会のようになっていったとも言える。例えば、花火大会であれば花火を観ることは大きな目的ではあるが、それはあくまでも目的のひとつであり、仲間やパートナーと一緒に時間を過ごすことそのものが本来的な目的である場合も多い。フェスも同様で、音楽は重要だが、仲間やパートナーと共に過ごす時間こそ大切である、といった消費のされ方が強まっている印象を受けるのだ。つまり、ライトリスナーのパイが増えてくるため、ブッキングされたアーティストの統一性よりも、単純に知っている人が出ているかどうか、もっと言えば、音楽に詳しくない参加者でも知っている人が出ているかどうかがフェスに参加する上で大きなポイントになっているのかもしれない。そういった参加者側のニーズを汲み取った結果として、アクトがポップ化していったという背景はあるように思う。そもそも、フェス自体の認知度が上がったことでポップアクトがフェスに出演しやすくなった、という認識の変化もあるだろう。