DECO*27、R Sound Design、じん……代表曲リメイクから見えるボカロシーンへの新たなアプローチ
サンプリングされた人の声に歌詞やメロディを当てはめることで、歌声を生成するVOCALOID(ボーカロイド)。2000年にヤマハ株式会社での開発がスタートし、2007年にクリプトン・フューチャー・メディア株式会社から発売されたVOCALOID2・初音ミクは大きな社会現象となった。彼女らの歌声は今も大きなエネルギーを生み出し続けている。
近年、ボーカロイド全盛期とされる2010年前後に注目された楽曲が、10年以上の時を経てリメイクされることが多くなった。今回は、それらのボーカロイド曲を振り返り、その共通性について触れていきたい。
DECO*27「モザイクロール (Reloaded)」
ボーカロイドシーンを長くに渡り牽引しているDECO*27。現在も数多くのヒット曲を生み出し、ロックやフォークを取り入れた柔軟な表現力が魅力的なボカロPだ。2010年に発表した「モザイクロール」は、GUMI(Megpoid)を使用した代表的な楽曲。同曲は時を経て、2021年に「モザイクロール (Reloaded)」として発表された。
「Reloaded」版では初音ミクが使用され、力強い歌声であったGUMIとは一味違う丁寧に歌い上げるような印象に。また、原曲はシーン全盛期らしいギターサウンドが疾走感を印象付けていたが、本曲では現代のボカロシーンでも多く見られるタイトなドラムサウンドが目立つアレンジになっている。
さらに注目すべきは、一部歌詞の変更があった点だ。最も大きな変化は2番のサビ前である。〈思いやりの欠如と 形だけの交尾は/腐れ縁のキミとアタシによく似ている/それでもいいから…。〉の部分が〈きみがくれた涙はあたしが飲み干すから/「弱虫でもいい」と甘い嘘をくれたら 逃げ出せたのかな〉となっている。これは、DECO*27の「愛迷エレジー」と「弱虫モンブラン」を彷彿とさせる歌詞といえる。
このように懐かしさを覚えるものでありながら、新たな気持ちで楽曲の世界観を楽しめる一曲となっていた。
R Sound Design「Re:帝国少女」
次に触れたいのは、R Sound Designの「帝国少女」だ。R Sound DesignはDTMで作曲活動をスタートし、2017年に発表した「帝国少女」がヒット。YouTube上では、2022年6月現在1,290万回再生を突破している。揺らぎを感じる曲調と音数の多い歌詞のフィット感が印象的な楽曲だ。
今年の3月9日には、楽曲発表5周年記念として「Re:帝国少女」というタイトルでリメイク版が公開された。リメイク後はエレクトリックなサウンドがより濃くなり、電子的な空間が表現されている。また、前述の「モザイクロール」と同様にドラムサウンドはかなりタイトになり、リズムの細かさも際立つ。これにより、楽曲全体がはっきりした輪郭に。さらにサビ前に訪れる一瞬の空白は、楽曲にメリハリを生み出し、聴き手の意識をより一層クリアにする印象を受けた。原曲のベースを大切にしながらも、さまざまなスパイスを入れ込むことで表情の変化を感じさせる飽きさせないアレンジに仕上がっている。