ハラミちゃんが大切にする、ストリートピアノから生まれる一期一会 価値観の変化に導かれた幸福度の高い生き方

人生がラッキーに転じたのは周りの目を気にしなくなったことが大きかった

ーーそういった事情は、これまでのインタビューでも話されていますけど、そんな挫折の時期を経て、今やラッキーの連続という人生に転じてきたのは、何かきっかけがあったんですか。

ハラミちゃん:ラッキーに転じたのは、周りの目を気にしなくなったことがとても大きかったです。音大生もそうですが、小さな頃から本気で楽器をやってきた人って、その厳しい世界を知ってしまっているがゆえに、ミスタッチした演奏を簡単に人に見せられないと思うんです。自分の中で恥ずかしい思いがすごくあって、私もそのタイプでした。でもストリートピアノでは、その場ですぐに弾くので、ミスタッチも多くて、クオリティ的には必ずしも高くないものを世に出すことには、最初はすごく抵抗がありましたね。

ーーそうだったんですね。

ハラミちゃん:こんな演奏では誰も喜んでくれないと思い込んでいたので。でもそんな時に、当時勤めていた会社の先輩にストリートピアノに誘ってもらって。その人はクラシック音楽やピアノに詳しくない人で、私が弾いた様子を動画に撮って、軽く「YouTubeに上げていい?」と聞いてきて。最初は、こんな演奏を世に出すなんて考えられないと思ったんですけど、ある時に、「誰も見ないからいいか」と思ったんです。何の影響もないだろうと。

ーーそうですね。その時点では、ただのピアノ動画ですから。

ハラミちゃん:はい。何も起きるはずがないからまあいいかと思ったら、2週間で約30万回再生まで行ってしまって、かつコメントが、すごく褒めてくださるんですよ。それが本当に不思議で、今まではたった一音のことについて厳しく言われる世界にいたのに、「笑顔で楽しそうですね」「他の曲も弾いてください」と、明るいコメントがたくさんあって、世の中の反応にびっくりしたんです。

ーー完全に、パラダイムシフトですね。

ハラミちゃん:「今まで自分が気にしていたことって何だったんだろう?」と。もちろんプロとして一音一音にこだわることは今も大事に思っていますけど、「そこだけではないのかも」って。そこで世の中の見え方がぐるんと変わったんです。

ーーすごい体験です。

ハラミちゃん:それは、クラシック音楽を詳しく知らない人が近くにいてくれたからだといます。先入観なく、耳コピや即興を私の特徴として前面に出してくれた。私は今でも、これでいいのかな? っていう感覚があるんですけど。

ーーまだありますか。

ハラミちゃん:あります。毎回やるたびに、「この演奏でいいのかな」と思ってしまうところがあって。でもそこが魅力なんだということを言ってくれる存在がいたことが、自分の中でラッキーが続いていった最初の出来事だったと思います。

ーーメンタルの問題ですね。基準を変えたというか。

ハラミちゃん:それと、自分の中でいい経験をしたなと思うのは、一度一般の会社に勤めたことで、これまでいた世界を客観的に見ることができたことです。もちろん素晴らしいし、大好きな世界なんですけど、別の世界を知れたことは大きかったです。

その場でキャッチボールできるライブ

ーーちなみに、家でリクエスト曲を想定して予習したり、新しい曲の勉強はしてますか?

ハラミちゃん:移動時間に、最近流行ってる曲を聴いたりすることはあるんですけど、それに追いつかないままにリクエストに応えていることが多いです。でも、逆にリクエストで知って、気に入る曲はすごく多いです。

ーーなるほど。

ハラミちゃん:本当に、教えてもらうことは多いです。お父さんお母さん世代は昔の洋楽とか、若い人はTikTokで流行ってる曲とか、知識量が増えていくのが面白いですね。自分のサブスクの再生履歴が面白いことになっていて、演歌もあれば、『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)で流れている曲もあれば、いろんな世代に合うようにいろんな音楽を聴いて、ということをずっとやってます。

ーー一般的なアーティストは、ステージの上からみなさんに音楽を届ける役割ですけど、ハラミちゃんはむしろ皆さんに教わっている面がある。

ハラミちゃん:本当にそうなんです。今やっている全国ツアー(インタビューは5月中旬)は、夜公演がセットリストなしで、リクエストだけで構成しているんですけど、洋楽の「君の瞳に恋してる」という曲のリクエストをいただいて、すぐにはわからなくて。舞台の上でスマホを使って耳コピするんですけど、サビになって“知ってる”と思った瞬間、みんなが“そうそう、ハラミちゃん、それだよ”って(笑)。声は出せないんですけど、みんなに教えてもらって。みなさんが教えてくれて、私がそれを返すみたいな、キャッチボールになっているんです。それがファンの方にも、新感覚なんだと思います。

ーーその場でキャッチボールできるライブなんて、普通はないですからね。

ハラミちゃん:そういう、自分にしかできないライブをやれる瞬間がすごく嬉しいです。幸福度が高いので、それは続けていきたいなと思います。

ーー今日のお話で、ハラミちゃんがどういうキャラクターで、何を目指しているのか、ちょっとわかった気がします。みなさんと一緒に、音楽をキャッチボールしているんだと。

ハラミちゃん:そうなんです。

ーーそうなると、この先の夢はどうなりますか。自作曲を増やすとか、大きな場所で演奏したいとか?

ハラミちゃん:私は、これをやるということをあえて決めない、目標を決めないことを目標にしています。それは、目標を決めすぎてしまった過去があって、体や心を一回壊しているので、それをしないように、というところがあるんです。でも、やりたいことの希望はたくさんあります。一番やりたいのは、とにかくいろんな場所に行くことです。アーティストのライブって、基本的に人を呼ぶものじゃないですか。あらかじめ決まったセットリストや、ステージングの中でやるものだと思うんですけど、自分が一番大切にしているストリートピアノは、自分がその場所に行くことによって、偶発性や、一期一会の部分が生まれるんです。ある程度場所は限られるかもしれませんが、それ以外にも保育園や、病院や、色々な施設、そこに自分が行って、そこでしか体感できない音楽や出会いを、大切にしたいなと思っています。

ーー素晴らしいですね。

ハラミちゃん:海外にも行きたいですし、“行く”ということが、ずっとやりたいことなんです。

ーーそのやり方だと、周りの状況にあまり左右されず、長く続けられそうですね。

ハラミちゃん:そうなんですよ。私にとってピアノは、一生続けたい職業であることを、すごく嬉しく思っています。色々な音楽家がいらっしゃる中で、自分が一番大事にしたいことは親しみやすさなので、もっとピアノを身近に感じてもらえたら嬉しいし、“みんなが知ってる曲を楽しく弾いてくれるのがハラミちゃん”というテーマは、ぶらさずにいたいです。

■リリース情報
ライブDVD,Blu-ray
『STREET PIANO in日本武道館 ~ハラミちゃん947日目のキセキ~』
8月24日(水)発売

■ライブ情報
ポップスピアニスト・ハラミちゃんが至極の名曲を弾きまくるベストライブ開催決定!
『ハラミちゃんリクエスト収穫祭 ~みんなで決める!!最強ピアノカバーBEST50~』
2022年9月11日(日)東京国際フォーラム ホールA
【vol1.(昼公演)】OPEN 12:00  START 13:00 / 【vol.2(夜公演)】OPEN 17:00 START 18:00
チケット先行受付中/イベント詳細:https://harami-shukaku.com/

ハラミちゃん最大規模の全国ツアー
『ハラミ定食2 全国ツアー2022 ~新メニューお届けするぬ!~』開催中!
チケット発売中:http://eplus.jp/harami/

サイン入りチェキプレゼント

ハラミちゃんのサイン入りチェキを2名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。

応募方法

リアルサウンド公式Twitterか公式Instagramをフォロー&本記事のツイート、または応募ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウント、もしくはInstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※チェキはランダムでの発送となります。指定はできません。
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<締切:6月21日(火)>

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