Juice=Juice 稲場愛香卒業公演「私のアイドル人生は、本当に幸せでした」 一面ピンクの武道館から送り出した旅立ち
アンコールを求める客席がピンク一色のペンライト光で染まる中、ステージにはホットピンクのドレスをまとった稲場が1人で再登場。穏やかな微笑みをたたえて場内を見回したのち、おもむろに歌い始めたのは「もしも…」だった。これは、ハロー!プロジェクト所属の全メンバー(当時)による混成ユニット・モベキマス名義で2011年にリリースされたシングル『ブスにならない哲学』のカップリング曲で、「もう少し 帰りたくない」というセリフや〈かわゆく私にチューして〉といった“あざとい”歌詞が散りばめられた糖度の高いテクノポップナンバー。稲場はアイドル人生最後のソロ歌唱曲として、自らの武器と位置づける“あざとさ”を最大限に表現できる楽曲を選んだということだろう。客席はコールの代わりとなる息の合った手拍子で、稲場のそんな心意気に応えていた。
その後再び9人がステージに勢揃いし、オリエンタルなメロディラインが印象的なバラード「シンクロ。」をしっとりと披露すると、最後のMCパートへ突入。ここではメンバーが一列に整列し、稲場が今の思いを綴った手紙を読み上げるセレモニーが実施された。
手紙はアイドルを志した幼少期を振り返るところから始まり、彼女自身の半生を順に追っていく構成。「(カントリー・ガールズとして)メジャーデビューできたときの喜びは忘れられません」の一文を読み上げる際には涙で声を詰まらせ、「あえて言うなら“ダンスが大好き”ということくらいしか自分には特徴がないなと思っていたこの頃、メンバーやファンの皆さんから“あざとい”というとても特徴的な代名詞をつけていただいて、新たなキャラクターができたことでアイドルとしての自分の役割を見つけることができた気がします」と転機を語った。
さらに、健康上の理由で活動休止を余儀なくされたことに触れながら「今でもカントリーのメンバーのみんなには本当に感謝しています」と述べ、2018年のJuice=Juiceへの電撃加入については「ほかのグループを卒業してからの加入という、新しい形で加入した私を温かく受け入れてくださった」と感謝の言葉を重ねる。そして現メンバーに対してもそれぞれ思いの丈を伝えたあと、「歴代の先輩方もおっしゃっていた『いつの時代のJuice=Juiceも最高って言ってもらえるようなグループに』、それがまた明日からでも更新できるみんなだと確信しています」とエールを送った。
現在の自身については「私の大好きな曲『未来へ、さあ走り出せ!』の歌詞のように、〈あの頃の私よりは少し強くなれたかな〉と思えています」と、この場面のBGMに選んだ楽曲を引き合いに出して述べたあと、「私のアイドル人生は、本当に幸せでした」と総括。「また皆さんにお会いできる日を楽しみに、“がんばりまなかん”していきます!」と笑顔で宣言した。
これに対し、メンバーからも1人ずつ稲場へのメッセージが伝えられる。江端が「泣くかなと思っていたんですけど、泣かなかったです!」と無邪気に言い放ったかと思えば、涙で言葉が詰まる入江、「おめでとう」を「ありがとう」と言い間違えそうになる有澤など、各人各様のバラエティに富んだスタンスでトークは和やかに進行し、その一つひとつの言葉に稲場は目を細めていた。
そんな中、ハロプロ研修生北海道時代から稲場と縁のある工藤は、涙ながらに「私にとって初めての先輩が稲場さんでした」と前置きした上で、将来的に後輩から「工藤さんって誰に教わったんですか?」という珍しいタイプの質問を受ける想定で「『稲場さんに教わったからしっかり者なんだよ』って言える日が来るようにがんばりたい」との構想を明らかにした。
さらにリーダーの植村は「稲場愛香ちゃん、お誕……」と有澤同様に言い間違え未遂を起こし、すかさず稲場から「お誕生日は12月なんですよう!」のツッコミが入る一幕も。それでも「私がリーダーになって初めて(卒業を)見送るのが愛香で、本当によかったなって」とほがらかに感慨を述べ、会場を温かなムードに包み込んだ。
感動の涙と偶発的な笑いに満ちたJuice=Juiceらしいセレモニーを終えると、オーラスには稲場が選曲したという「如雨露」が華やかにパフォーマンスされた。「心に寄り添ってくれる歌詞が好き」と語るこの楽曲を晴れやかな表情で歌い踊り、場内を清々しい空気で満たしていく。歌い終えた9人は、最後はオフマイクで「本日は本当にありがとうございました!」と生声をオーディエンスに直接届け、満面の笑みで客席に手を振り続けながら軽やかにステージをあとにした。
なお、稲場によるソロ歌唱楽曲「もしも…」は、5月31日より各配信サイトにてダウンロード販売が開始されている。