三浦大知、「燦燦」で綴られた大切な人へ捧ぐ言葉 『ちむどんどん』に寄り添う歌声を聴く
2020年4月よりスタートした、黒島結菜主演のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合)。沖縄本土復帰50周年を記念し制作された本作の主題歌「燦燦」を歌うのは沖縄出身のアーティスト・三浦大知だ。沖縄の壮大な情景を全編フルCGアニメーションで描いたドラマのタイトルバックと重なり合う、三浦のどこまでも伸びやかな歌声が心の琴線に触れる。
三浦自身が作詞、音楽プロデューサーのUTAと共同で作曲した「燦燦」は“家族の光”をテーマにしたバラード。ドラマのために書き下ろされた曲だが、「三浦大知さん自身のことばで、思いで、ぜひ表現してください」と制作スタッフにアドバイスされたという三浦は、昨年亡くなった祖母に贈る“手紙”のような一曲に仕上げた。
1997年にFolderのメインボーカルとしてデビューしてから今年で25年。三浦は抜群の歌唱力と世界水準のダンスで人々を魅了し、「R&Bを歌って踊る」という独自のスタイルを確立してきた。そんな彼を支えてきたものは何なのか。「燦燦」は今や日本屈指のエンターテイナーとなった三浦大知という人間の記憶と思い出を巡る、最もパーソナルな一曲だ。
〈陽の光 纏う朝〉〈開く窓 願う姿〉〈忘れない 机の前 あなたの場所〉。ドラマのオープニングで最初に並ぶフレーズは、三浦が子供の頃から見ていた祖母の姿を一瞬にして想像させる。語りかけるような三浦の歌声も相まって、不思議ともう会えなくなった大切な人が眼前に浮かび、泣きたくなるほど清らかな気持ちになるのだ。
4月11日にJ-WAVEで放送された番組『STEP ONE』内のコーナー「MUSIC+1」に出演した三浦。そこで、彼は祖母について「自分以上に自分を信じてくれていた人だった」と語った。何があっても、どんなときも自分を信じ、自信と勇気を与えてくれる存在。その存在を、自分の見えている世界を自分の背中側から照らしてくれる〈順光線〉と表現した三浦の自然豊かな土地で育まれた純度の高い感性に驚かされる。
そして、この曲に何度も登場する印象的なフレーズが〈「大丈夫 ほら 見ていて」〉というもの。“「」”でくくられたその一言は、きっと三浦にとっての〈順光線〉だった祖母がかけてくれた言葉なのだろう。だが、同じ言葉であるにもかかわらず、ラストでは全く違う意味を持つ。“「」”は二重に変わり、三浦が力強く響かせる〈『大丈夫 ほら 見ていて』〉は、祖母から三浦ではなく、三浦から祖母に捧ぐ決意の言葉となるのだ。