ulma sound junction、これまでとこれからをつなぐ熱い演奏 ワンマンライブ『Reignition』振り返る

 4月13日にメジャーでの1stEP『Reignition』をリリースしたプログレッシブロックバンドulma sound junctionによるワンマンライブ『ulma sound junction One Man Live 2022”Reignition”』がShibuya CYCLONEで開催された。ulma sound junctionは沖縄・石垣島出身の幼馴染で構成され、2005年のスタート時から国内外のバンドと共演し、2019年には世界各国で開催されるインディーズバンドコンテスト『エマージェンザ・ジャパン2019』で優勝、ドイツで行われた『エマージェンザ2019ワールドファイナル』で世界3位を獲得した(山里ヨシタカはベスト・ギタリスト賞を受賞)。世界からのお墨付きを得て、舞台をメジャーへと広げたその第1弾がEP『Reignition』であり、2022年初ライブとなったこのステージだ。

 「最後まで楽しんでいきましょう」。田村ヒサオ(Ba/Vo)の言葉とともに、フロアに響きわたったのは「Over Cure part.1」のパワフルでロングなグロウル。ライブハウスの床を震わせる重低音を轟かせる加勢本タモツのドラム&ベースにグラフィカルな山里と福里シュンによるギターが絡み合って、ヘヴィでサイケデリックな雰囲気を生み出すこのオープニングから、続く「Rotten Apple」ではグルーヴィで変幻自在なアンサンブルを聴かせる。ヘヴィメタルやメタルコア、変拍子やリフやビートでポリリズムを展開する一筋縄でないジェント、またはTOOLにも通じる万華鏡的なプログレッシブロックなど、その背景に様々なエッセンスが感じられるサウンドはダイナミックでスリリングだ。「Rotten Apple」は、冒頭から重量感のあるリフの応酬が続く破壊力満点のサウンドだが、歌心のあるパートも魅力的で観客を引き込み、「Shooting Testament」は豊かなリリシズムと爆発的な感情とが拮抗する。ライブでは曲の持つドラマ性の高さがより際立って、序盤から観客をがっちりとつかんでいく。

 田村はMCで、改めてメジャーから1stEP『Reignition』をリリースできたこと、今年初のライブを開催できたことへの感謝を語る。また「歩みは止めておりませんので」とここからへの期待をにじませた。そして演奏したのは、EP『Reignition』のリード曲「Modern Bleed」。ulma sound junctionの旨味を凝縮して、より激しく、よりカオティックに、そしてエモーショナルにと展開するパワー溢れるアンサンブルにフロアが湧く。観客は大声こそ出せないが、拳を突き上げ、リズムに体や頭を揺らして応えていく。そしてここに続いたのは「Rotten Apple」同様にインディーズ時代からの曲で、EP『Reignition』にリレコーディングという形で収録された「Idea」。後のMCで、今回のEPで新曲とともに昔の曲をリテイクしたことで発見があったと田村は語った。これまでの曲たちは、ライブを重ねていく中で観客とともに研鑽を積んできた、観客と一緒に作ってきたものだという。結成から17年という年月を思えば、リリースしてきたアルバムは少ないかもしれないが、その分、多くのライブの場で曲のアイデアが生まれ、生み出された曲をじっくりと育て上げながら進化させてきた。アルバムやCDに収録されるのは、その現在進行形の最新版ということだろう。洗練された、壮大なプログレッシブロック「Idea」はまた、ライブの流れの中でも、観客に陶酔感のある旅をさせる曲になっていて、一段と深くその密なアンサンブルに飛び込ませる引力がある。

 さらに「patient of echo」や「Utopia」など形容しがたい、ハイブリッドで奇天烈なパワーを発する曲(それでいて、キャッチーでもある)を連投すると、「お望みの長いやつやってやろうかな」(田村)とスペクタクルなロック組曲「1day a suite」で、馴染みのファンを歓喜させる。テクニカルなアンサンブルで一大抒情詩を鮮やかに編み上げていく魅せるステージに、カタルシスにも似た拍手が沸き起こった。そしてラストにプレイしたのは、これもまたライブで観客とともに作り上げた曲だという「Elem-5/6/7」。EP『Reignition』でもリレコーディングされた曲であり、このステージでもバンドのこれまでとこれからの歴史をつなぐ熱い演奏と重厚なシンガロング、咆哮で放った。

 アンコールでは、この日を迎えた喜び、メジャーという機会を得たことで、続けることや人の目に触れることの大事さを改めて感じた等を、メンバーそれぞれが語った。止まることなく、新しい音楽、新しい姿を見せたい。これからの活動も楽しみにしてほしい、と改めて宣言し、「最後にパンチのある1曲やって帰ります」と「Perfect Rapture」を演奏。EP『Reignition』のタイトルには、新たなフィールドでもバンドを再認識させる、また、自分たちの音楽を再着火させるという意味が込められている。高いクオリティを誇る音源だけで楽しむのではなく、是非ライブで熱量を直に浴びることを勧めたいバンドだ。

オフィシャルサイト
https://ulmasoundjunction.com/

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