CYNHN、未来に向かっていくエネルギー 突出した存在感示したZeppワンマンをレポート
歌にかじりついてきた者たち、歌うことでしか生きられない者たち。CYNHNの歌声は、ときに叫びのようでもあり、その生々しさに私は心を奪われ続けた。4人組ヴォーカルユニットであるCYNHNが活動するシーンでは、技術的な比較は分からないがしかし表現という意味でCYNHNの代わりになる存在を私は知らない。ただひたすら、彼女たちが突出した存在であることを確認し続けた。
2022年5月1日、CYNHNのワンマンライブ『CYNHN ONE MAN LIVE「Blue Cresc. -ν-」』がZepp DiverCity TOKYOで開催された。発表から開催当日まで40日もないなかでのライブだったが、チケットは開演直前にソールドアウト。そして、定刻通りにCYNHNはステージに登場した。青いステージに。
大舞台の幕開けを飾ったのは「はりぼて」。2017年にCYNHNはアイドルとしてデビューしたが、2018年の2ndシングル『はりぼて』からヴォーカルユニットへと舵を切っていく。感傷が涙腺を突きそうにもなったが、CYNHNの4人は、リリース当時とは見違えるような声量で歌っており、過去を振り切るかのような姿がひとつの回答のように感じられた。続く「ごく平凡な青は、」ではユニゾンが実に力強い。「くもりぎみ」の歌詞には〈繊細〉という単語が出てくるが、CYNHNのヴォーカルもまた繊細な表現を聴かせていく。
「氷菓」での歌声は、鮮やかなノスタルジーを運んできて再び涙腺が刺激された。現在の彼女たちの歌声は、時間軸も現実も虚構も掻き乱す。「解けない界面論」では、ステージ上のスクリーンに、綾瀬志希の手がけたアニメーションが流された。彼女の歌は、ごく短いフレーズでも聴く者の情緒を揺さぶる。ファンキーなリズムとともに、4人のヴォーカルが躍動していく。
そして「夜間飛行」から「インディゴに沈む」へ。百瀬怜の歌いだしの切迫感、青柳透の歌声の艶やかさ、月雲ねるの歌声があわせもつ切なさと甘さから、狂おしいサビへと流れこむ。活動開始から5年を経たCYNHNの成長ぶりを雄弁に物語る一曲だ。
アブストラクトなエレクトロニカとともに歌われる「水の中の」は、2022年にリリースされた2ndアルバム『Blue Cresc.』で聴かせた新境地だった。曲調の変化も激しいなかで、スタンドマイクによって聴かせる繊細なヴォーカルは、現在の彼女たちの真骨頂だ。そして「イナフイナス」は、綾瀬志希のソロによる強烈なフェイクとシャウトから始まった。さらに「アンサンぶる」は、CYNHNのメインソングライターである渡辺翔が作詞作曲した楽曲にして、現在のCYNHNにとってもっとも刺激的な一曲だ。強烈なギターリフとともに、苛立ちや鬱屈を歌いあげていく。
「水生」のイントロには、ベースのソロが追加されていた。「解けない界面論」同様にファンキーであり、その躍動感がZepp DiverCity TOKYOという空間で存分に発揮されていた。