CYNHN、歩みを止めなかったZeppワンマンへの軌跡 「生」の現場を今こそ見ておくべき理由
CYNHN(スウィーニー)の歌は、「生」の現場でこそ聴く者の胸を揺さぶり、掻き乱し、ときに水の底のような静謐さへといざなう。そのCYNHNが、2022年5月1日にZepp DiverCity TOKYOで『CYNHN ONE MAN LIVE「Blue Cresc. -ν-」』 を開催する。
CYNHNは、JOYSOUNDとディアステージの共同オーディションを経て結成され、2017年にデビューしたヴォーカルユニット。現在は、綾瀬志希、月雲ねる、百瀬怜、青柳透で構成されている。
多くのアーティストがそうであるように、コロナ禍においてCYNHNの歩みもまた険しい局面に向き合ってきた。それでも、2020年末に開催されたアイドルファンの投票による「アイドル楽曲大賞」では、メジャーアイドル部門の2位をCYNHNの「水生」が獲得。フェスも配信での開催となったからこそ、逆にヴォーカルユニットとしてのCYNHNの真価が評価された結果だった。しかし、2021年1月には崎乃奏音が卒業。ユニットは大きな岐路に立たされた。
新メンバーを入れるのかどうかの議論も、メンバーとスタッフの間ではあったかもしれない。そもそも、CYNHNは結成時は6人だったのだから。しかし、CYNHNは4人での活動を続ける道を選ぶ。そんななかで、今度は百瀬怜が2022年1月から休養。どうなるのだろうか……という緊張感のなか、3月には徐々に再開していくことを発表した。
そして、その直後に発表されたのが、Zepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブだった。その時点で、すでに発表から開催まで40日もなかったのだ。CYNHNが勝負に出た、と感じた。
CYNHNは、かつて「2021年9月23日までに3,000人キャパの会場を埋める」という目標を掲げていたが、コロナ禍によりそれは難しくなった。しかし、それに限りなく近い目標をZepp DiverCity TOKYOでリベンジしようとしている。
CYNHNは、ディアステージのなかでも特異な、ラブソングがほぼないユニットだ。では何を歌っているのか? それは内面の葛藤だ。CYNHNの歌声は、4人体制となってから、より生々しくリアルに迫るようになった。もちろん、ヴォーカルの技術的な向上もある。しかし、何よりも仲間との離別を経験してきた4人にしか歌えない「うた」が、現在のCYNHNにはある。
4人体制となって初めての音源は、2021年4月の配信シングル「AOAWASE」だった。CYNHNのメインソングライターである渡辺翔が作詞作曲した「AOAWASE」では、〈しゃがんで愚痴ってらしく進んで生きて行こう / 一向に完成しない私背負って / 着こなせてない言葉歌ってでも前へ前へ〉と歌われていた。まるで渡辺翔からCYNHNへの手紙のように。そして、その楽曲に命を吹き込んだのは、メンバーの4人のヴォーカルだった。綾瀬志希、月雲ねる、百瀬怜、青柳透それぞれがもどかしい状況に向き合い葛藤し、その先にあったのは、繊細な表現をしながらも凛とした歌声だった。それは、作詞を渡辺翔、作編曲をKan Sanoが手がけた2021年11月配信シングル「レア」にも継承されていく。