「ポカリスエット」新CM曲がバイラル首位に imase×PUNPEE×Toby Foxのタッグが切り込んだ新境地
本曲「Pale Rain」は、繊細で緻密なバックトラック、たゆたうようなラップのフロウ、imaseのファルセットの浮遊感で、重力から解放されたような軽快さが魅力のミディアムチューン。さらに途中でブレイクビーツに展開するリズムの強弱で、サビの力強さと疾走感を演出している。洗練されていて、メロディも譜割りも複雑で構成も凝っているが、imaseの歌声と、後半に登場する〈僕は脱水少年 君は脱水少女〉というパンチラインがキャッチーだ。さらに、音数の少なさで感じさせる儚さも魅力。打ち込み主体のトラックの中に、シャッター音や水滴の音、小鳥のさえずりを入れるなど、アンビエント的な解釈も窺え、マニアックな音楽リスナーの耳も虜にしそうなポテンシャルもある。
ただ、歴代の「ポカリスエット」CM曲のように、ワンフレーズだけ即歌うことができるような楽曲ではない。そういう意味では、非常に攻めた楽曲である。さらには、YouTubeで公開中の75秒版のCM映像も、かなり攻めている。飲料水のCMは、その商品を飲むシーンを入れるのが定番だが、今回は飲むシーンどころか、商品そのものも出てこない。つまり、攻めた映像コンセプトには、攻めた楽曲が必要だったのだろう。
ここ数年、ネガティブなニュースが世界に影を落とす中で、この攻めたスタンスには、素直に賛辞を贈りたい。そして、復活の兆しが見え始めた次の季節を彩るにふさわしい楽曲が誕生したことを、とても喜ばしく思う。思えば、3年ぶりの夏らしい夏が、すぐそこまで来ているのだ。「Pale Rain」は、こう奏でている――羽はいらない。なくても、自分次第で飛べる、と。