緑黄色社会、『映画クレヨンしんちゃん』にもたらす深みと希望 忘れたくない気持ちを歌った力強いポップソング

 4月20日にリリースされた緑黄色社会のニューシングル『陽はまた昇るから』。表題曲の「陽はまた昇るから」は、美しいストリングスとピアノの音色、力強いリズム、そしてぐんぐんと広がっていくような気持ちのいいメロディが瞬く間に耳を掴む、スケールの大きな楽曲だ。ここ数年、とりわけ今年1月にリリースした最新アルバム『Actor』までのタームで、数々のタイアップなどを通してひたすらポップバンドとしての性能と精度を高め続けてきた、今の緑黄色社会だからこそ鳴らせる超王道のポップソング。短いイントロから長屋晴子(Vo/Gt)の声が入ってきた瞬間に一気に心を持っていかれるような強烈な引力は、バンドの新たな代表曲となるにふさわしいエネルギーを放っている。

 その「陽はまた昇るから」は『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の主題歌として書き下ろされた。『しんちゃん』とのタッグについて、メンバーは「主題歌のお話をいただいた時はみんなで手を取り合って喜びました」とコメント。「勇敢さや男の子としてのカッコよさ、そしてユーモアもあって、様々な表情を見せてくれるしんちゃんに凄く憧れを抱いています。(中略)でも、しんちゃんにもきっと寂しい時だったり、悲しいことがある。そんな気持ちに寄り添える楽曲にしたいと思って書きました」と楽曲に込めた思いを語っている(※1)。その言葉通り『クレヨンしんちゃん』の、特に映画において貫かれているテーマと、本作『もののけニンジャ珍風伝』のストーリーに優しく寄り添いながら、映画が終わった後も続いていくであろうキャラクターたちの日常を照らし出す、とても温かなムードの1曲となっている。

【4月22日(金)公開‼】『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』予告

 『もののけニンジャ珍風伝』は今年でアニメ放送開始から30周年となる『クレヨンしんちゃん』の映画第30作という節目の作品だ。1993年の『アクション仮面VSハイグレ魔王』に始まるフィルモグラフィは『ヘンダーランドの大冒険』(1996年)、『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)、『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』(2003年)、『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014年)、『新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』(2019年)といった名作の数々によって彩られているが、『新婚旅行ハリケーン』の橋本昌和が監督を務め、脚本を橋本とともにうえのきみこが執筆した今回の『もののけニンジャ珍風伝』もその系譜に名を刻むことになるのではないか。作品を観てそんなふうに感じた。

 『しんちゃん』映画らしい、日常と非日常をスムーズに繋げたファンタジックな世界観(今回は人知れず存在する忍者の里が舞台)、映画らしいアクションやスペクタクル、そして「家族とは何か」という王道のテーマに今改めて真正面から取り組んだストーリー。5年前、しんのすけが誕生し名付けられたその瞬間から始まっていく物語は、長く続く『クレヨンしんちゃん』という作品の歴史も包み込んで、その先へとつなげていく。もちろん『クレヨンしんちゃん』らしいギャグや、どう考えても子供向けではないネタの数々も満載。『もののけニンジャ珍風伝』は家族みんなで観て、笑って泣けるファミリー映画の王道といえる作品となっている。

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