anoの音楽活動に映し出される“あの”のアイデンティティ この時代にこそ響く「AIDA」に宿るもの
“あのちゃん”として親しまれ、総フォロワー数140万人超えのアーティストanoが、シングル「AIDA」で2022年4月8日にトイズファクトリーからメジャーデビューを果たした。
自由奔放かつトリッキーな発言で注目を集めることになった人気バラエティ番組や、冠番組『あのちゃんねる』(※現『にゅーあのちゃんねる』/テレビ朝日)への出演。さらにファッションモデル、タレント、女優業など、その活躍の幅は広い。Z世代を中心にカリスマ的人気を誇る唯一無二の存在だ。
そんな“あの”の本質を映し出しているのが、アーティスト名義“ano”として活躍する音楽活動である。
2021年8月、バンドI’sを結成。2020年9月にはano名義で1stシングル「デリート」をリリースしている。衝動的かつ儚いパンキッシュな世界観。個性を感じるエッジーなアート表現に富んだビジュアルワークで孤高の存在を色濃く打ち出してきた。
サウンドやアレンジメント、歌詞によって時代を映し出す鏡となるポップミュージックは、世の中の雰囲気を先んじて体現することがある。ano作品を聴いて思ったのは、大人世代が壊してきた世の中への不信感、相互監視社会となった世間の息苦しさ。混沌とした世界へ向けて、いまの自分の気持ちを赤裸々に表現したポップパンク的なアプローチ。心の奥底に潜む闇をえぐった衝撃的な言葉が綴られるなかに、絶望ではない希望を感じられるのが力強い。
そんなanoが、4月8日よりNetflixにて配信開始のアニメ『TIGER & BUNNY 2』EDテーマソングである「AIDA」をリリースした。
お互いのことを思うが故、すれ違いや傷つけあってしまうことを自身の言葉で描ききる。そんなanoの切実な想いを、VIA所属音楽プロデューサー・TAKU INOUEが温かみを持つオルタナティブなロックサウンドによって、パンデミックにくすんだ心に刺激を与えながら癒していく。
イントロダクションから歪んだリフの強靭さ、心の揺れをあらわすフィードバックノイズ。前へ前へと歩みを突き進めていく温かみのあるコード感と呼応するパワフルなリズム。サビでノイジーにギターと歌声が炸裂する圧巻の音楽の力。anoの手によるポジティビティを感じとれる本作の歌詞は、『TIGER & BUNNY 2』からの影響が大きかったという。自らの体験と重ね合わせたであろう耳に残る歌声の力、シャウトする心の叫び、想いの強さ。タイトルの「AIDA」とは、君と僕の心の距離である“間”であり、結果的にたどり着いた“愛だ”という叫びのダブルミーニングへと結実する。それこそがano自身のアイデンティティのアップデートに他ならない。
本人が意識したかはわからないが、「AIDA」の〈正義も犠牲も交うこんな世界〉という昨今の情勢へも通じるかのような一言が胸に突き刺さる。さらに〈正解のない世界 それでも届けるよ 確かな僕を 今日も 僕の 僕の 愛だ〉と言い切る姿勢。これまで「デリート」、「Peek a boo」、「SWEETSIDE SUICIDE」、「F Wonderful World」など、自作ナンバーでは刹那的かつ、ときに自暴自棄なリリックを重ねながらも一筋の希望の光を歌い紡いできたano。最新作「AIDA」では、ついに自己や他者を肯定する境地へとたどり着いた。この時代にこそオルタナティブに響き渡るポップパンクアンセムが誕生したのだ。
日々の生活に生きづらさを感じる人、なんとか踏みとどまって生きる人、理想と現実の乖離、様々なしがらみにとらわれた心情を救う、ネガティブとポジティブの間に揺れるanoの気持ちが込められた優しさを感じられるナンバー。それが、「AIDA」だ。ひとりぼっちの部屋、もしくは人が行き交う雑踏のなかで、イヤフォンやヘッドフォンで、そのサウンドを身体中に注ぎ込んで欲しい。いま、君が聴きたかった曲はこんな作品のはずだ。
■リリース情報
「AIDA」
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