三浦大知、支持され続けるパフォーマンス力 ツアー再スタートを機に3つのポイントから考える
2022年4月からスタートしたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』の主題歌「燦燦」を担当する三浦大知。無音シンクロダンスや激しいダンスでもブレない歌声などでそのパフォーマンス力は広く知れわたり、まさに日本を代表するエンターテイナーと言われる。一方、日本のエンターテインメントはさらに進化し、最近はダンスも歌も高いスキルを誇るグループやアーティストが増えている。その中で、なぜ三浦大知は最前線に立ち続け、唯一無二の存在として支持されるのか。2019年に無期限延期となっていたツアー『DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2022 COLORLESS』の再スタートを機に考えたい。
プロが認めるスキルの高さとチャレンジ精神
まず彼のパフォーマンス力は、オーディエンス側だけでなく、アーティストからの評価が高い。先日放送されたDa-iCEの音楽バラエティ『Da-iCE music Lab』(日本テレビ系)や『中居正広のダンスな会』(テレビ朝日系)といった番組でも、アーティストから「歌とダンスをどうやって両立させるか?」「どんなトレーニングをしているのか?」といった質問をされていた。三浦大知と同じパフォーマンスをする側だからこそ、彼がどれだけチャレンジングなことをしているのか、より深く理解できるのだと思う。
2021年4月リリースのシングル曲「Backwards」では、前に進みたいけれど後ろに戻されていくことを表現するために、振付の途中にフロアに座って開脚し、そのまま後転するという振付が入る。流れの中でさらっとスムーズに行ってしまうので、その難しさに気づかないこともあるかもしれないが、その振りに歌が加わる状況を冷静に見ると、とんでもないことを行っていることが分かる。また2017年リリースのアルバム『HIT』リードトラック「Darkest Before Dawn」のミュージックビデオでは足元の悪い崖の上で踊るシーンがあり、彼を良く知るダンサーたちからも驚かれている。
ただ三浦大知は、曲の世界観をより伝えるものがダンスだと語っている。
「なぜ、ダンスがあるかというのは、音がさらによく聞こえたり、言葉がさらに飛び込んできたり、お互いを増幅させるためにあるんじゃないかな、と僕は思っているので」(『OUT of MUSIC vol.12』)
だから難しいことを見せたいわけではなく、最善の表現は何かを考えた結果なのだと思う。
リスペクトする仲間とともに成長したいという思い
2つ目はダンサーたちとのコンビネーション。彼はともにステージを創り上げるダンサーをバックダンサーとして扱わない。
「“三浦大知”という名前で曲を作って出していますが、ダンスパフォーマンスをするときは、ダンサーがいなければ決してできないから。“ダンサーがここにいるから、こういうふうに見えるんだ”というダンサーの必然性をわかってもらえたら。そういったことを、少しでも分かりやすく見せたいです」とその思いの背景を説明している(『OUT of MUSIC vol.12』)。この考え方は昨今のことではない。今ほど日本にダンス文化が広がっていなかった10年以上前のインタビューでは、次のように語っていた。
「僕はダンサーという職業は、アーティストとほぼ一緒だと思っているんです」
「ダンサーという職業を、今まで以上に確立できる場所を作りたい。僕自身、まだまだ大きいことは言えないですけれど、それくらい自分もダンスの文化に対して頑張りたい」(『OUT of MUSIC vol.12』)
この未来へのビジョンを、彼は実現していく。2017年にリリースしたシングル曲「(RE)PLAY」のミュージックビデオでは世界で活躍し、ダンサーからリスペクトされているスーパーダンサーが勢ぞろいした。特にラストのサビで14人のダンサーが全員登場してそれぞれのダンスを見せるシーンは圧巻で度肝を抜かれる。三浦がこの曲をリリースした当時のインタビューでは「僕はダンサーに対してリスペクトがあるので、それがしっかり伝わる曲になっていたらいいなと思っています」(『OUT of MUSIC vol.48』)と解説していた。
さらにこのミュージックビデオにも出演し、ツアーでダンサーも務めた三浦と縁の深いダンスパフォーマンスグループのs**t kingzが2021年3月に音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にバックダンサーとしてではなく単独で出演した。s**t kingzの魅力、そして日本においてダンス文化が広く浸透していったという時代背景があったことはもちろん、三浦大知がつねにダンサーの魅力を発信していったことも、一つの影響となっているだろう。
ソロアーティストとして立ちながらも、ダンサーを含めてみんなで高みを目指すという姿勢が、三浦大知のパフォーマンスをより見ごたえのあるものに押し上げているのだと感じる。