Ado×てにをは、二篇のラブソングで表現した愛の真理 「ギラギラ」と「永遠のあくる日」の物語を考察

Ado、ラブソングで表現した愛の真理

 そんな「ギラギラ」の1年と1カ月後、2022年3月14日発表されたのが、同じ制作陣で再タッグを組んだ「永遠のあくる日」だ。てにをははこの曲の公開に際し、“『ギラギラ』がバレンタインデーの贈り物だとしたら『永遠のあくる日』はホワイトデーのお返しです。”とコメントを寄せている。

 

 「永遠のあくる日」のMVにも一人の少女・あくるちゃんが登場する。少女はギラギラちゃんと同じ修道院に身を置いていた人物で、いなくなってしまったギラギラちゃんを少女が回想する形で物語が展開していく。

【Ado】永遠のあくる日

 「永遠のあくる日」の中で少女の目を通して描かれる景色は、ギラギラちゃんの見ていたものとは真逆の、明るく清廉な世界だ。その中で、少女はひそかに胸を焦がしながらギラギラちゃんに見惚れている。おそらくは、ギラギラちゃん自身が誰より厭うていたであろう痣のある顔を。そして、「ギラギラ」にある〈この世にあるラブソングはどれひとつ/絶対 私向けなんかじゃないでしょう〉という嘆きを包みこもうとするかのように、〈(醜いぼくらのラブソング作ろう)〉と応える。

 言葉は繰り返し使われれば使われるほど摩耗し、陳腐になる。「愛している」というフレーズはその最たる例だろう。本当に愛しているからこそ、その感情までもが陳腐に見えないように、使い古された「愛してる」を避け、別の言葉で表そうとする。〈あいしてるなんていらない〉、〈正しいことばっか云わないでくれ〉と。それでも、結局多くのラブソングは「愛してる」にたどりつく。それは、「愛してる」という言葉が、一番ストレートでシンプルな愛の言葉だからだろう。

 ギラギラちゃんとあくるちゃんの心のありようを対比するかのように、「永遠のあくる日」のAdoの歌声は、音楽に溶け込むような柔らかさ、ひとつひとつの音をじっくり歌い上げる繊細さが際立つ。そして、ありふれた「あいしてる」という言葉をあえて25回も歌詞に織り込み、Adoの歌声でリフレインさせることによって、「あいしてる」という言葉の持つ力が、より実感を伴って胸に響くのだ。

 「ギラギラ」は、世界に愛されなくたっていい、誰だってありのままではいられない、と割り切ることで、自分自身を解放する物語だった。けれど、「永遠のあくる日」の少女にとっては、そんなギラギラちゃんのいた世界こそが「映画のよう」であり、「永遠の中」だった。ありきたりすぎる言葉だとわかりつつ、それでも「あいしてる」と繰り返さずにはいられないほど、愛に満ちた世界を生きていた。ギラギラちゃんが欲した“左利きで描いた顔が愛される世界”も、〈give love〉という願いも、本当は望むまでもなく、すぐ傍らにあったのだ。

 だからこそ、この曲のタイトルが「永遠のあくる日」であることが、より切なさを募らせる。この曲が歌われるのは、もうギラギラちゃんがいない世界だ。

 「ギラギラ」への“お返し”として贈られた「永遠のあくる日」は、愛の歌であるとともに、愛されたいと願った「ギラギラ」に与えられた救いでもある。2曲はまったく違うようでいて、ふたつの世界はコインの裏表のように分かちがたく繋がっている。そう考えると、世界はいつも、少し掛け違えているだけなのかもしれない。愛されたい「ギラギラ」と愛していると伝える「永遠のあくる日」、2曲を通して聴くと、そんな気がしてくる。

■ライブ情報
Ado 2ndライブ
日程:2022年8月11日(木・祝)
会場:さいたまスーパーアリーナ
チケット:公式ファンサイト「Adoのドキドキ秘密基地」最速先行あり

■リリース情報
「永遠のあくる日」(詞曲・編曲:てにをは) 
ストリーミング&ダウンロード:https://ado.lnk.to/eienPR 
「ギラギラ」 (詞曲・編曲:てにをは) 
ストリーミング&ダウンロード:https://ado.lnk.to/giragiraPR 

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