ゆず、止まることなくファンに寄り添い歩んだ日々 アルバム『PEOPLE』リリースに至るまでの活動を総括

 3月23日、ゆずのニューアルバム『PEOPLE』がリリースされる。1996年、北川悠仁と岩沢厚治で結成し、90年代後半の路上ライブブームにおける先駆け的存在であったゆず。彼らの活動の軸は、常にライブだった。ファンとともに声を出し、踊り、会場中に笑顔の花が咲く。そんな、ゆずとゆずっこ(ファンの愛称)のライフワークであるライブが、2020年、未知のウイルス蔓延により突如、断たれることとなった。

 『PEOPLE』は、そんなコロナ禍に制作されたアルバムだ。ファンから寄せられたメッセージをもとに歌詞を作った希望の歌「そのときには」、5年ぶりに北川、岩沢が作詞作曲とも共作した「公私混同」、2004年のヒット曲「桜木町」のアフターストーリー「NATSUMONOGATARI」、デビュー25周年第1弾配信シングル「奇々怪界-KIKIKAIKAI-」と、早くもファンにとって思い入れの深い配信リリース作も収録されている。

ゆず「そのときには」Music Video
ゆず「公私混同」Official Audio
ゆず『NATSUMONOGATARI』MUSIC VIDEO
ゆず『奇々怪界-KIKIKAIKAI-』MUSIC VIDEO

 有観客でのライブが開催できなくなったとはいえ、ゆずは決して止まらなかった。先述の配信リリースはもちろん、SNSの活用もそのひとつだ。YouTubeチャンネルでは、YouTube LIVEにてまだ歌詞のない楽曲を先行披露したり(のちの「そのときには」)、手洗いソングを作ったりと、今だからこそできること、会えなくても笑顔にできることを探し続け、届けた。北川のInstagramでは、制作過程のイマジネーションを明かす姿も。MV公開企画や、配信ライブへのカウントダウンなど楽しませつつ、彼らしい温かな言葉でファンに寄り添った。

 ライブも、できる形を模索した。2020年9月27日から10月25日にかけての毎週日曜日には、5週連続で自身初のオンラインツアー『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』を開催。公演日のすべてでTwitterトレンド入りを果たし、SUPERLIVE by OPENRECでの総視聴者数は80万人を超えた。

 同ツアーでは、全5公演すべてにコンセプトを設け、彼らにとってゆかりのある神奈川・横浜文化体育館や、母校・横浜市立岡村中学校から音楽を届けた。ライブの定番であるメジャーデビュー曲「夏色」以外、被りなしのセットリストを組み、5日間で計59曲を披露。きっと、ファンが喜ぶ姿を何度も想像し、構成を練りに練ったのだろうことが伝わる、愛と工夫にあふれたライブだった。

ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY1:出発点 ダイジェスト映像
ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY2:思春期 ダイジェスト映像
ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY3:新天地 ダイジェスト映像
ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY4:青写真 ダイジェスト映像
ゆずオンラインツアー<YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN>DAY5:未来図 ダイジェスト映像

 翌2021年5月29日と6月5日には、『YUZU ONLINE LIVE 2021 YUZUTOWN / ALWAYS YUZUTOWN』を開催した。DAY1(5月29日公演)は、前年春に全公演中止となった全国アリーナツアー『YUZU ARENA TOUR 2020 YUZUTOWN』のリベンジという格好。1年待って、ようやくお披露目することができたセット、衣装、演出、楽曲ーーそのすべてはポップで、鮮やかで、ひたすらに楽しいものだった。岩沢に煽られ、ファンはともに歌うかのようにコメント欄を歌詞で埋め尽くす。

ゆず「うたエール」 from LIVE FILMS『YUZUTOWN / ALWAYS YUZUTOWN』

 つくづく、ファンをあっと言わせるのが好きな2人だ。DAY2(6月5日公演)ではなんと、かつて彼らが路上ライブを行っていた聖地・伊勢佐木町の横浜松坂屋前の風景をバックに演奏。思い出話に花を咲かせながら、ファン投票1位に選ばれた「幸せの扉」、コロナ禍にある人々に寄り添う優しいバラード「GOING HOME」を歌っていたのだがーーここで、カメラがぐっと引きのアングルを映すと、そこにはなんと『YUZUTOWN』のステージが広がっているというサプライズ。ここからは、DAY1とはまたひと味違う、「1年を通して成長した『YUZUTOWN』を見せたい」と、火花に空中浮遊にと何でもありの夢の時間を作り上げ、鬱屈な日々を吹き飛ばすパワフルなライブを見せた。

 有観客ライブを再開したのは、8月9日神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール公演を皮切りに3カ所で全18公演が行われた『YUZU TOUR 2021 謳おう』。約2年ぶりにファンを前にして生の歌声を届けることができた。

ゆず「YUZU TOUR 2021 謳おう」Digest Movie<for J-LODlive>

 同年10月25日、ゆず25周年突入の記念すべき日には、『YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館』と冠した、北川と岩沢、2人だけによる完全弾き語りライブも行われた。新旧織り交ぜたセットリストに、ゆずのこれまでの歩みを感じ。コールアンドレスポンスができないなかでも、配信の向こうにいるファンにも、想いを歌にして届けたゆず。同ライブの模様は『PEOPLE』特典映像に収録されている。これから折に触れ、何度も観たい内容だ。ゆずの歴史を語る上で、欠かせないライブであったと思う。

ゆず デビュー25周年突入記念ライブ『YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館』Digest Movie

 そしてこの日、4年ぶりとなるアリーナツアー『YUZU ARENA TOUR 2022』の開催を発表。岩沢は落ち着いた優しい言葉で、北川は、感情そのままのまっすぐな言葉で、何度も何度も「また会えるそのとき」を誓った。ツアーは3月26日からスタート、全国10カ所24公演をまわる。

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