『明日ちゃんのセーラー服』の音楽に宿る作品世界 杉山勝彦、斉藤朱夏らによるハイクオリティな楽曲

 美しい描写と中学生の青春をいきいきと描いたアニメ『明日ちゃんのセーラー服』(TOKYO MXほか)は、ヒット曲を多数手がけるクリエイターによるテーマソングや劇中歌も話題。物語やキャラクターとリンクしながら、ポップスとしても高いクオリティを保つ『明日ちゃんのセーラー服』の楽曲にスポットを当てることで、佳境に入った物語をよりドラマチックに感じることができるだろう。

 『明日ちゃんのセーラー服』は、小学生の時は廃校寸前ということもあり、6年間クラスは自分一人だけという経験を持つ主人公・明日小路が、田舎の名門女子中学・私立蠟梅学園への入学を機に初めてのクラスメイトたちと共に青春を謳歌する物語。2016年8月より『となりのヤングジャンプ』にて連載されている漫画が原作で、コミックスは現在9巻まで発売。細かく丁寧に書き込まれた描写と、少女たちの日常が描かれたストーリーが人気の作品だ。

 まるで幼い子どものように、何に対してもピュアに反応する明日の声を務めるのは、本作がTVアニメ初主演となる村上まなつ。明日に感化され、次第に心を解き放ってゆくクラスメイトたちを、雨宮天(木崎江利花役)、鬼頭明里(兎原透子役)、石川由依(水上りり役)、麻倉もも(平岩蛍役)、田所あずさ(四条璃生奈役)、伊藤美来(神黙根子役)など実力派の声優陣が好演。女子校という秘密の花園ならではのドキドキと青春のみずみずしい輝きが、鮮やかなタッチで描かれている。

 そして物語に彩りを与えているのが杉山勝彦をはじめ、中野領太(agehasprings Party)、shirosagi、白戸佑輔(Dream Monster)、Jazzin’parkなど人気クリエイターが手がけるテーマソング/劇中歌だ。

 杉山は、蠟梅学園中等部1年3組が歌うオープニングテーマ「はじまりのセツナ」、明日が憧れるアイドル・福元 幹(CV:斉藤朱夏)が歌う劇中歌「hem」の作詞作曲を担当。杉山はAKB48グループをはじめ、乃木坂46の代表曲などを数多く手がけるなど青春をテーマにした楽曲に定評がある。キャラクターソングでも手腕を発揮し、『A3!』では瑠璃川幸(CV:土岐隼一)「MINORITY」、九頭玲央&瀬尾浩太[雪白東、高遠丞](CV:柿原徹也、佐藤拓也)の「正体」、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(TOKYO MXほか)の劇中歌ユニット“XX:me(キスミー)”の楽曲、『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』(TOKYO MXほか)のキャラクターソングなどを手がけている。これらキャリアを踏まえても、青春を描いた『明日ちゃんのセーラー服』での音楽は、杉山の腕の見せ所といったところだろう。

TVアニメ『明日ちゃんのセーラー服』ノンクレジットOPアニメーション/OPテーマ「はじまりのセツナ」蠟梅学園中等部1年3組

 意味もなく顔を合わせて笑い合ったり、急に泣いてしまったり、青春に理由はないもの。ただ今という時をこのまま続けたい。「はじまりのセツナ」は、蠟梅学園中等部1年3組のメンバーが入れ代わり立ち代わり、時には声を重ねながら、出会いのときめきをこのままずっと感じていたい、という気持ちを歌っている。ピアノをバックに爽やかだがどこか切なさのあるメロディラインで始まるのは、杉山の真骨頂と言える。サビ前では、高鳴る鼓動のようなドラムのビートに乗せてコーラスが重なり、高揚感をかき立てる。胸のざわめきにも似たカッティングギター、制服のスカートがひるがえるようなストリングス。音の一つひとつが、青春の1ページを切り取ったように鮮烈だ。

関連記事