The 1975、『サマソニ』初ヘッドライナーに寄せる期待と興奮 新章へ繋がる沈黙の2年を振り返る
沈黙期間、唯一バンドの名がクレジットされたのが、2021年3月リリースのNo Rome、チャーリーXCXとの新曲「Spinning」だ。長らく3組のコラボは噂されていたが、いざ蓋を開けてみるとそれぞれの個性が絶妙な塩梅でミックスされているのがわかる。ベーシックな4つ打ちのビートの上をカラフルなサウンドが遊ぶポップナンバーは、チャーリーとNo Romeの軽快なボーカルはもちろん、おそらく3組で練り上げたであろう日常を切り抜いたリリックが心地よく響く。そもそもThe 1975のアルバムに深く関与しているNo Romeとの作品は、『Notes On A Conditional Form』からの流れも感じつつ、鬱屈としたコロナの世界で音楽に触れる喜びを思い出させてくれるものであった。
そして2022年、年明け早々にバンドがスタジオ入りしたことがメンバーのSNSから確認される。マシューのInstagramでは、アコースティックギターを抱えメロディを奏でる短い映像も見ることができ、その後も不定期ながらレコーディングの様子がアップされている。ここで出来上がった楽曲がいつ、どのような形で世に出るかはわからないが、『サマソニ』のステージで何かしらサプライズがあるかもしれない。
The 1975が『サマソニ』を特別なフェスとして認識してくれていることも、今回のラインアップ発表の興奮に加味される。これまで同フェスには2013年の初来日時にSONIC STAGE(以下、主に東京会場のステージを明記)、2014年にMARINE STAGE、2016年にはSONIC STAGEのトリを務め、2019年はB’zを前に2ndヘッドライナーとして再度MARINE STAGEに立った。着実に出演するスロットが上がっていくこのストーリーに、2022年、新たに日本で初のヘッドライナーとしての記憶が書き足されていくことになる。
UKをはじめとする欧州のアーティストたちは、アジアの中でも極東に位置するここ日本に特別な感情を抱いていることが少なくない。The 1975も同様で、その体験や思いを「Guys」のリリックに認めている。2013年、初来日した際の記憶が彼らに良い思い出として刻まれていることも、今に続くバンドと『サマソニ』の関係性に繋がっているのだ。長い沈黙を破り、新たなフェーズに突入したThe 1975と今年の夏また会えることを、今から楽しみにしている。