AKB48、原点に立ち返ることで見えた“楽曲”の重要性 いまグループに必要な曲とは?

「根も葉もRumor」が突破口に?

 AKB48は『桜の木になろう』(2011年)から『失恋、ありがとう』(2021年)まで、38作連続でシングルのミリオンセールスを達成していた。AKB48が停滞していると囁かれながらも、数字的にはどの時代の曲も見劣りはしない。また、CMなどのタイアップ曲も変わらずに多い。それでも昨今、低迷期と言われてしまうのは前述したグループのドキュメンタリー性が薄らいできたことがひとつの要因かもしれない。気持ちが揺さぶられるドラマ性が枯渇気味となり、それにマッチした楽曲が広がらなくなってきたのではないだろうか。

【MV full】失恋、ありがとう / AKB48 57th Single【公式】

 特に、2016年に高橋みなみ、翌年に渡辺麻友というシンボリックなメンバーが卒業し、『選抜総選挙』でも姉妹グループのメンバーが上位を占めるようになった同時期から、数字ほどの勢いを感じなくなってしまったように思う。また、次世代のメンバーが頭角を現す瞬間こそ、グループとしてもっともドキュメンタリー性を放つものだが、そこをうまく捉えられず、アピールもできなかった感がある。

 逆に坂道シリーズは、乃木坂46が今年で結成11年目、櫻坂46(欅坂46時代も含む)、日向坂46(けやき坂46時代も含む)はいずれも結成10年にも満たない。グループとしても、まだまだ色々なストーリーを生み出しやすい時期である。それぞれの楽曲もグループの物語性に合ったものが多く、聴いていると感情が揺さぶられることが多い。

根も葉もRumor Dance Ver. / AKB48 58th Single【公式】

 AKB48は、グループとしての活動歴が長くなればなるほど、興奮できるドラマが生まれづらいという壁にぶつかっているのかもしれない。しかし、2021年の楽曲「根も葉もRumor」はその突破口となった。「AKB48は実は底力がすごい!」という部分を打ち出し、強烈なダンスパフォーマンスを見せつけ、グループの気骨を感じさせた。歌詞やミュージックビデオも、あえてノスタルジックなテーマを持ち込み、それを踏まえた上で新たな時代を切り開こうとしていたように見え、ミリオンセールスには届かなかったものの、良い意味でリセットされたと言えるのではないか。「これが、これからのAKB48だ」という指針になる、今までにないAKB48を堪能できる楽曲だった。

 さて、重要なのは次の一手。これから楽曲を聴いてもらえるかどうかは、グループが生み出すドラマチックなドキュメンタリー性にかかっているかもしれない。

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