Anonymouz、歌詞と歌声の美しさを存分に伝えたステージ YOASOBIや藤井風、宇多田ヒカルらのカバーも披露

 ライブ後半では、ライブならではの迫力とAnonymouzのボーカルの融合を見せていく。壮大なサビで魅了した「Your Plan」では、ステージ後方の壁に投影されるランダムな閃光が雷のようで、視覚にも強く訴えかける。全体的に柔らかく温かみのあったカバーパートから一転、バンドサウンドが強調される楽曲でギャップを見せた。ドラムソロを混ぜこんだイントロで始まる「Lips」ではラップも披露。叙情的なボーカルだけでない、新たな一面も見せる。「Thrill」では序盤に低い音域をタムとともに静かに奏で、サビでは高音を中心に歌い上げる。ピアノの細かい装飾がAnonymouzのボーカルに寄り添い、さらに迫力を増した。

 「活動を通してどんどん夢が叶っています。みなさんの応援に救われています、ありがとう」と感謝を伝えると、続けて東京都美術館「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」テーマソングとして書き下ろし「Unbreak」をストリングスとともに披露。澄んだ歌声とストリングスの音色が溶けあっていく。包み込むように会場を満たした。本編最後の曲は「Eyes」。〈Wish you smiles and love in your life〉と祈るように歌う。曲を自分の手元から手放し届けるように、そっと歌い終えた。

 アンコールに応えたAnonymouzは初々しくグッズ紹介をすると、「本当に来てくれてありがとうございます」と改めて感謝を伝える。「みなさんの日常を少しでも鮮やかにできるように曲を届けるので、これからも応援してください」と気持ちを語ると、この日最後の曲として「赤」を披露。ドラムパッドのビートに乗る〈届け 届け〉という言葉は〈寝ぼけた指先 暗い部屋に差し込んだのは赤〉と続くが、この日この場所では、彼女の思いが目の前にいる観客に届けと願うように響く。ライブ中盤には、「顔を隠しているし投稿頻度も高くないから、もっとみなさんと近づきたくて」、「これからところどころため口で話してもいいですか?」と問いかけるなど、MCでも気持ちを伝えていたこの日。Anonymouzとして表現する歌詞や歌声の美しさを存分に伝えたステージになったと同時に、彼女自身がファンとの関係性を一歩進めたという意味でも思い出深い時間となった。

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