ガンナ「pushin P」の影響で欧米SNSでは”P”が大流行 その概念や正しい使い方は?

参照:https://charts.spotify.com/charts/view/regional-global-weekly/2022-01-20

 Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第17回となる今回は、2021年1月14日~2022年1月20日集計のチャートを見つつ、ジョージア州アトランタ出身のラッパー、ガンナ(Gunna)の曲「pushin P」と、SNSで大流行している“P”という絵文字の意味を解説したい。

Gunna & Future - pushin P (feat. Young Thug) [Official Video]

2017年リリースのジェイムズ・ヤング「Infinity」、13位に浮上

 先週に引き続き、17歳のシンガーソングライター、ゲイルのアグレッシブな失恋ソング「abcdefu」が1位に輝いた。Glass Animalsの「Heat Waves」が2位まで浮上し、長期間1位を保持していたザ・キッド・ラロイの「STAY」が3位にランクダウン。Imagine DragonsとJ.I.Dによる、ゲーム『League of Legends』の世界を舞台にしたアニメ『Arcane』の主題歌「Enemy」が4位となる。ジェイムズ・ヤングが2017年にリリースした「Infinity」がTikTokでバズったことにより、13位に浮上した。

Jaymes Young - Infinity (Visualizer)

“pushin P”というフレーズ、“P”の絵文字が欧米のSNSで流行

 ヤング・サグのレーベル<YSL Records>に所属する人気ラッパー、ガンナ。今年の1月7日にリリースされた3rdアルバム『DS4EVER』は、同日にリリースされたザ・ウィークエンドのアルバム『Dawn FM』を抑え、The Billboard 200で1位を獲得した。そんな『DS4EVER』に収録されている楽曲「pushin P」の影響で、欧米のソーシャルメディアユーザーの間では“pushin P”というフレーズ、あるいは“P”の絵文字が流行っている。ナイキなどの企業も公式アカウントでつぶやいており、今やSNSで“P”の絵文字を見ない日はない。

 ガンナがスラングの流行に一役を買ったのは今回が初ではない。ガンナは2018年に大流行した“Drip”というスラングを広めた一人としても知られている。“Drip”の意味はアーティストによって変わることもあるが、ダイヤモンドのようなジュエリーを表すスラング“Ice(氷)”の応用系として、氷がドリップする(滴る)といった解釈や、おしゃれな服やアクセサリーを身に着けていたり、自信や個性などに対して表す“Sauce(ソース)”が溢れ、滴っているという解釈が適切であろう。90年代や2000年代にも“Drip”という言葉を使用したラッパーはいたが、現代のヒップホップにおいて、“Drip”というスラングのパイオニアとなったのは、テキサス州ヒューストン出身のラッパー ソース・ウォーカ(Sauce Walka)であると言われている(※1)。

 “Drip”というスラングの流行を語る上で、ガンナとリル・ベイビーが2018年にリリースした大ヒットシングル「Drip Too Hard」は欠かせない。その他にも、ガンナは作品のタイトルに“Drip”という言葉を頻繁に使用しており、彼は流行らせたい言葉を何度も使用し、定着させることを自身のブランディングにもしているのだろう。

 そんなガンナが今作『DS4EVER』で流行らせようとしている“P”は、どのような意味なのだろうか? ニューヨークを拠点とする人気ラジオ番組『The Breakfast Club』にて、「朝早く起きるのは“P”ではない。この使用方法は合っている?」と聞かれた際に、彼はこのように語っている。

 もし俺がビーチが見える裏庭で朝起きたとしたら、それは“P”だ。シンプルに「プレイヤー」の“P”なんだけど、他にも使い方がある。例えば「あいつがやったことが気に入らない。あれは“P”ではない」とか。「プレイヤー」という言葉が由来だけど、それをプッシュすることによって、俺がやっていることの全てが“P”となる。俺の今日の服装はシャープだろ? 朝早くから“P”をプッシュしているんだ。(※2)

 「プレイヤー」という言葉が由来だとインタビューで語ったガンナ。また、お札(お金)を意味する「Paper」の“P”でもあると、Instagramで明かしていた(※3)。「プレイヤー」には、遊び人という意味以外にも、イケてる人気者や、行動をして稼ぐ人というニュアンスもあり、ソース・ウォーカも「“P”のイメージやライフスタイルは、テキサスとメンフィスだ。社会で最も大きな“P”は、金のために実行/プレイするプレイヤーたちだ」と語っている(※4)。

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